~KissHug~
「はい……」
携帯の向こう側は沈んでいた。

「芳樹?」

「うん、別れの電話だね。」

「会って、話したい。」


私は 勇気を出して芳樹の家に向かった。


家は、ボロいアパートだった。
素良の家とは、違う
小さな家…


芳樹は家の前に立っていて
私を見つけると
下を向いた。


「汚いから…」
玄関に入ると靴が散乱していた。

「おじゃまします。」

「誰もいないよ。」

「靴下汚れるから、スリッパはきな。」


リビングと呼べる場所も
予想通りだった。

私は、面喰らった。


  素良の家って
  おかあさんいないのに
  誰がかたづけてるんだろう


芳樹の部屋に入ると
少し片付いていたからほっとした。


芳樹はイスを出した。



「汚いだろ。」

「驚いた…おかあさんはいないの?」

「俺一人暮らし。」

「そうなの?
親は、どこに住んでるの?」


「かあさんは、入院中
親父は、もともといない。」


  心で考えていた


  複雑な事情ってことか…


「おかあさん病気なの?」

「うん。」


芳樹が聞かれることを
嫌がってるようだったから
もう聞くのをやめた。
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