~KissHug~
「帰っていいよ。」

私は、みじめに身支度を整えた。
涙があふれてきた。

ブラウスのボタンを全部とめ終わった瞬間
涙がポロポロ落ちた。

こんなに自分がみじめなのは
私の存在がみじめだから……

「もう、俺ら会わないほうがいいわ。
今までのことは
秘密にしておいたほうが
お互いのためだし
俺もずっとこのままじゃいけないって
思ってたから…さ…」


「秘密?」

「そう、秘密……」

みじめだった。
さっきまで素良の行為に感じてた自分が
情けなかった。


穴があったら入りたい……
記憶を消したい


「じゃあ、もう記憶から消して。
私も消すから…
今までのことみ~んな忘れて。」


「簡単だよ、俺には……」

「そうだろうね、素良には簡単だろうね。」

バックを持った。

「明日から透明人間になってね……」

そう言うのがやっとだった。


私が外に出て歩きだした時
素良も出てきた。
追いかけてくれる?
そんな
小さい期待を裏切って
素良は反対方向に消えて行った


  なんで?
  なんでこんなことになるの?


声を上げながら
泣きながら歩く月夜の道


芳樹の部屋の電気はついていた。


でも今は会えない……
ちがう男のことで
芳樹に泣きつくのは失礼だから

秘密にして…
いつもならワクワクする秘密という言葉も
ちがう意味でとると
残酷な言葉だったりするんだ


初めて知った……

< 161 / 451 >

この作品をシェア

pagetop