~KissHug~
私は芳樹の肩に頭をのせた。


「その人ね、ぷーちゃんにそっくりな人でさ…
目の下にちょっと大きいホクロがあった。
ぽっちゃりしてて
優しい顔をしていた。

『おかあさんの友達なの。雅恵っていうんだ。
どうして泣いていたの?』

『部屋におばけがいるみたいだったの』

『もしかして夕方やってたテレビみたの?』
俺はうなずいて
ひたすらヒックヒックしてたんだ。

『おかあさん、いつもいないの?』

『おとうさんがいないから
お仕事しなくちゃいけないから、夕方から、お店に行って
お店が終わったら、お弁当作りに行ってるの。
だから、僕は七時まで一人なの』

『おとうさんいないんだ…
さびしいね…』

『慣れたからいいの。
でもおかあさんにもっといてほしい』

また涙が出た。

『おかあさん守ってあげなきゃ
僕がおかあさんを守ってあげようね
おとうさんがいないことは
僕のせいじゃないもの。
こんな小さい子ひとりにして
悪いおとうさんとおかあさんだね』

最後の声は小さくなった。

そして俺を抱きしめてくれたんだ。


あたたかい胸だった。
ソファーに座って
赤ん坊を抱くように
俺を抱いてくれた。


『僕が寝るまでいてあげるよ』

その優しい人は
僕をぎゅっと抱きしめてくれた。

やさしく髪のなぜてくれた。
まだ小さかったから記憶は曖昧で
ちょっと言葉は思い込みもあるかも
しれないけれど
その人の顔と柔らかい体と
あたたかい手と胸は
覚えている・・・・

ぷーちゃんを初めて見た時
電流が走ったんだ。

俺ね、きっとあれが
今思えば初恋だったと思う
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