~KissHug~

~40~

「おとうさん、おでかけ?」

「あいつは、めったにいないよ。」

「ごはんとか、洗濯とか、掃除とかは?」

「お手伝いさんが来るんだ。
午前中だけね~
土日はこないけどさ~」


「さびしいね。」

「いや、慣れたよ。
かえって、わずらわしくないから。」

「素良のおかあさん、絵本に・・・」

「あれね、遺書だよ・・・・
寝る前に、あの本読んでくれたんだ。
朝いつものように目がさめたら
この手紙を置いて
かあさんは死んでた。
車で港に飛び込んだんだ・・・・
まだ、小さかったから
意味がよくわかんなくて
ただ、この遺書は誰にも見せちゃいけない
って思ってたんだ。」

「自殺?」

「ばかだろ?
自殺だってさ・・・・」

「自殺の原因は
あいつの女関係。
かあさんもばかだから
そんなくだらないことでさ~」

「苦しかったんだよ。
愛してる人に裏切られて・・・・」

「人なんて信じちゃダメさ。」


「でも一人では生きていけないよ。
素良だって、千鶴さんのこと
愛してるんでしょう?
しんじてるんでしょ?」



「信じちゃないよ~」


ほんと?
芳樹とのこと言っても傷つかないの?


「かあさんさ
ぷくちゃんに似てるんだよね。」


「なんか正直複雑…」

「あ、ごめん、ごめん~」

「芳樹にも誰かに似てるって言われた。
おかあさんの友達~
私っておばさんっぽいんだね。
へこむ・・・・」


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