~KissHug~
帰り道、黒塗りの車が停まっていた。


私が通り過ぎた時
後部座席の窓がシューと降りた。


「歩来さん。」

驚いて振り返る。

「先生!!」
大野医師だった。


「素良が会いたがってるんだ。
事情があって、ちょっと隠れてるから
一緒にきてくれるかな。」


私は大野医師の沈んだ様子に
ただ事ならない予感がして
車に乗り込んだ。



「素良になにか合ったんですか?」


「いろいろあって、今僕のとこにいるんだ。」

「学校も休んでるし
連絡もつかないって言ってたから
心配してたんです。」


「君まで、巻き込んで悪かったね。
ただ、素良がどうしても会いたいって
言うから、きみならなんとかできるかなって
一筋の光を求めて……さ……」


「何があったんですか?」


「僕も話す整理をしたいから
少し時間くれるかな。」


大野医師はまっすぐ前を向いて
目を閉じた。


私は緊張感で息苦しくなった。
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