~KissHug~

~56~

「そして治樹という男に会った。
おまえの父親は
バカ見たくおいおいと泣きわめいた。
俺は、院長の好意で病室で夏休みを過ごした。
治樹という男から
結果論だけ聞いた。
『俺はおまえの父親で
おまえの名前もつけたし春江を愛していた。
これから先は、俺がおまえの面倒を見る。』と・・・



俺はかたくなに拒否をしてきた。
それなら部屋を借りてほしい。
中学に入学した時
さすがに病院にいることもできずに
治樹に頼んだ。
治樹の家に近いところという条件で
家賃と生活費、学費は治樹が管理した。
院長もしょっちゅうやってきては
世話を焼いてくれた。
中学へ行ってから
俺は、頼み込んで新聞配達を朝夕やりとおして
自分の働いた金で生きる楽しさを
おぼえた。
なるべく毎月振りこまさる
治樹の金は最小限だけにして
つらかったけど
楽しかった。
いつか、この金を倍にして叩きつけてやるって…」

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