~KissHug~
そう言って
芳樹は病室を出ていった。

思わず出た自分に慌てているようだった。


「歩来・・・・?」
素良の声がした。


「ほっとけないの。
芳樹は、あのままだったら
素良を不幸にするから・・・・
あのまっすぐな芳樹が
本当の芳樹なの。」


「それでいいのか?」


「わかんない。
きっと答えが出るのはもっと先。」


「歩来は、巻き込まれてる。」

「わかってる。
運が悪かった。
素良を好きになったばっかに・・・」
そう言うとおかしくなって
笑った。


「今なら間に合うよ・・・」

素良が手を差し伸べた。


「さっきの握手が最後・・・
身体が素良を覚えてる。
細い指も熱い唇も
私を溶かしてくれた快感は
ぜったいに忘れない。
特別な思いでにするから・・・・」


「俺も忘れない。
心が愛で一杯の行為が
どんなに気持ちいいことかわかった。
歩来がした表情も
漏らした声も
俺の指が唇が
…心が忘れない………」


「ありがと。
こんなに短期間でこんな気持ちを
知ることが出来て
素良に出会ってよかった。」


二人には
距離はあったが
心はまた抱き合っている・・・・


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