【二度目の恋は、突然に】片山聖ハイスペ総務部長が推す相手は、削り節の香り

プロローグ 心安らぐ香り

 包み込むような柔らかい抱擁。幾度となく繰り返される、優しいキス。カクテルグラスに映る都会(まち)の夜景。そして――あの香り。
 封を開けたばかりの柔らかな鰹の削り節を、温かいご飯にかけたときのような心休まる香りが、男の体から立ち上る。
 (あ、大丈夫だ)
 反応を確かめるようにゆっくりと抱きしめられ、その火照った体の熱を徐々に移されながら、革張りのソファに座ったまま男の愛撫を受け続ける恵那(えな)は、その匂いに心が安らぎ、強ばった体がほぐれていく自分を感じた。
 男が、キスを止め、ふっと笑う。
 「俺、合格?」
 恵那は、小さく頷いた。
 それを合図に、男の体は更なる熱を帯びた。
 例えようもなく優しい笑みを浮かべた男は、「夢のようだ」とつぶやくと、恵那を組み敷き、再び唇を重ねた。
 今度のキスは、濃厚だった。男の舌が、唇を押し開き、否応なしに恵那の口内に入る。華奢な体が、跳ねた。
 敏感なところを丹念に暴いていく舌。
 (大丈夫。嫌じゃない)
 それどころか・・・・・・。
 男は、キスをしながら恵那の服の下に手を入れ、直に肌に触れた。
 男の体臭が、強くなる。だが、不快には思わなかった。それは、濃いめの合わせ出汁のようだったから。
 (この匂い、好き)
 恵那は、男に身を委ねた。
 恵那の心と体が、完全にほぐれたのを見てとった男は、恵那をベッドに移し、深い交わりを持った。
 恵那は、嫌がらなかった。そのことに安堵した男は、慎重に、でも大胆に腰を動かし、恵那に何度も声を上げさせた。そして、全てが終わったとき、荒い呼吸を整えながら、恵那に何度も耳元で「愛してる」と囁いた。
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