札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
オリヴィアが迷っていると、再び積み上がっていく札束。
その光景に釘付けになる。


「この金がいらないと?」

「もちろん欲しいです……!」


ケースから次々と出てくる札束にオリヴィアの思考が鈍っていく。
仮面をつけ直した彼の唇が歪んだ。


「なら、俺の言うことに従え」

「──はい、喜んで!」


オリヴィアは勢いのまま書類にサインをしていく。
もう頭も目もお金でいっぱいだった。


「これでお前は俺の〝妻〟だな」

「…………ん?」
 

オリヴィアの耳に届いたのは、予想外の言葉だった。
〝妻〟という言い方に首を傾げることしかできない。

(わたしは娼館の面接に来たんじゃないの?)

そのことを問いかけようとするが、ロベールがオリヴィアの名前を見て、わずかに目を見開いていた。


「まさか……あのディルムーン辺境伯の娘とは」

「あ、あの……」

「なるほどな……」


仮面をしていても、声のトーンでなんとなく何を考えているかわかりそうなものだが、今は聞き間違いかどうかを確かめるのに必死だった。

(妻って何……? ここで働く従業員っていう意味かしら)

名前を書いた紙を金髪の少年に渡されてしまい、それを追いかけようと手を伸ばすが……。
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