札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~

「ああ、金が欲しいんだったな」

「……っ!?」


オリヴィアの両手のひらには、先ほどビンタされた札束があった。

(たっ、た、大金がぁ……!)

そのまま固まっていると、どこからか音もなく大量に人が出てきたではないか。
皆、黒い布に全身が包まれていて目元しか見えない。

(今まで気配を消していたというの? 全然意識していなかったから気づけなかった……やっぱり勘が鈍っているのかしら。ショック……)

オリヴィアが落ち込んでいる間も、彼は巨体を動かしてさまざまな指示を手際よく出していく。

部屋の向こう側では、女性たちの不満げな声が複数聞こえてきた。
遠のいていく足音、問答無用で女性たちは帰されているようだ。

(つまり…………わたしが採用されたということ?)

オリヴィアは札束を手のひらにのせたまま動けずにいた。


「馬でここまで来たのだろう? ディルムーン辺境伯は、このことは知っているのか?」

「どうしてそれを……」

「知っているかいないか、さっさと答えろ」

「お父様には言っていません」

「そうか。なら挨拶に行かないとな」


オリヴィアが不思議に思っていると、ジョセフィーヌを手懐けていた金髪の少年の姿があった。
彼に聞いたのだろう。やはり双子だったようだ。


「彼らはマルセルとアナイスだ」

「…………はい」

「初対面で双子だと気づいたのはお前が初めてだな」


オリヴィアは彼らを見ると、ジョセフィーヌを引いていたほうがアナイス。
マルセルがロベールのそばにいる少年のようだ。

(……他の方々は双子だと気づかなかったの?)

二人の服装や髪型は同じで意図的に似せているのだと思った。
だから気づかなかったのだろう。


「準備をする。しばらくそこで待っていてくれ」
< 28 / 216 >

この作品をシェア

pagetop