札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
「ああ、金が欲しいんだったな」
「……っ!?」
オリヴィアの両手のひらには、先ほどビンタされた札束があった。
(たっ、た、大金がぁ……!)
そのまま固まっていると、どこからか音もなく大量に人が出てきたではないか。
皆、黒い布に全身が包まれていて目元しか見えない。
(今まで気配を消していたというの? 全然意識していなかったから気づけなかった……やっぱり勘が鈍っているのかしら。ショック……)
オリヴィアが落ち込んでいる間も、彼は巨体を動かしてさまざまな指示を手際よく出していく。
部屋の向こう側では、女性たちの不満げな声が複数聞こえてきた。
遠のいていく足音、問答無用で女性たちは帰されているようだ。
(つまり…………わたしが採用されたということ?)
オリヴィアは札束を手のひらにのせたまま動けずにいた。
「馬でここまで来たのだろう? ディルムーン辺境伯は、このことは知っているのか?」
「どうしてそれを……」
「知っているかいないか、さっさと答えろ」
「お父様には言っていません」
「そうか。なら挨拶に行かないとな」
オリヴィアが不思議に思っていると、ジョセフィーヌを手懐けていた金髪の少年の姿があった。
彼に聞いたのだろう。やはり双子だったようだ。
「彼らはマルセルとアナイスだ」
「…………はい」
「初対面で双子だと気づいたのはお前が初めてだな」
オリヴィアは彼らを見ると、ジョセフィーヌを引いていたほうがアナイス。
マルセルがロベールのそばにいる少年のようだ。
(……他の方々は双子だと気づかなかったの?)
二人の服装や髪型は同じで意図的に似せているのだと思った。
だから気づかなかったのだろう。
「準備をする。しばらくそこで待っていてくれ」