札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
結局、札束に気を取られて食べずにいたため、そのままになってしまったようだ。
泣きそうになるのを抑えつつも、アナイスとともにジョセフィーヌの元に向かった。

その途中には真っ黒な服を着ている人たちに取り押さえられるようにして、暴れている少女の姿があった。


「──離しなさいっ! 無礼者が!」


先ほど人形のよう美しく佇んでいた姿とは一転して、激しく暴れているではないか。
オリヴィアと目が合った瞬間、鋭くこちらを睨みつけた。
けれどアナイスは気にする様子はなく素通りしていく。

(どうして彼女はこんなに怒っているのかしら)

不思議に思いつつ、彼のあとをついていった。

お菓子を食べられなかったオリヴィアは落ち込みつつも娼館をあとにした。

(そういえば肝心なことをすべて聞き忘れたような……だけど今、大切なのはこのお金でお母様の薬を買うことだわ)

それからは頭が空っぽのままジョセフィーヌに乗って、ディルムーン辺境伯領へ駆け抜けて行った。
そうでなければ涙が溢れそうだったからだ。

(あのおいしそうなお菓子を食べたかったのに……!)

その後悔が大きな波のように押し寄せてくる。


「悔しいよぉ~~~!」


チャンスを逃してしまった己の不甲斐なさに思わず声が漏れた。
ジョセフィーヌがうるさいと言わんばかりにブルルと声を出したため、下唇を噛みながら声を押し殺す。

(恥を忍んで、お菓子をもらえばよかったのよ……!)

オリヴィアはロベールに渡された何か書かれた数枚の紙と、札束が手元にあるのを何度も何度も確認をしながら、ディルムーン辺境伯邸を目指した。


* * *

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