札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
「まさか、もう行くのですか!? 先ほど着いたばかりなんですけど……っ!」
「ああ、今日からエンバルト公爵邸で暮らしてもらう。妻としてな」
「……本当に?」
「荷馬車もある。荷物はたくさん詰めるはずだ」
どうやら予定を変えるつもりはないようだ。
オリヴィアは今からエンバルト公爵邸に向かわなければいけないらしい。
まだ心の整理はできていないものの、気持ちを切り替えた。
それにここにお金を置いたら、すぐに働かなければと思っていたため丁度いいかもしれない。
──パタン
アイナスと父を置いて応接室を出た。
荷造りのために自室へと案内する。
とはいっても、極貧生活でオリヴィアのものなど何もない。
「ここは本当に君の部屋か?」
「はい、そうですけど……」
辺りを見回しつつもロベールは眉を寄せた。
「ここまでひどいとは」
彼がそう呟いたため、やはり事前に辺境伯邸の事情を知っていたのだろう。
オリヴィアは二着のワンピースと靴やカバンに詰めるが、ロベールにそれを阻止されてしまう。
邪魔をしないでという意味で睨みつけると、どうやら衣服や靴は公爵家で用意してくれると聞いて驚いていた。
そうなればオリヴィアが持っていきたいのは何もない。
何も入れるものがないカバンに入れるものはないか辺りを見回していると、背後からロベールの声が耳に届く。
「結婚の申し出を受けてくれ感謝する」
半ば無理やりのような気がしたが、彼はどうしてオリヴィアを選んだのだろうか。
あの場にはたくさんの女性たちもいた。それに彼がここまでする理由が知りたかった。