札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
オリヴィアに力強い視線を送るロベール。
まるで逃げたら許さないという脅迫のように見えた。

(これは契約結婚……お父様の言った通りエンバルト公爵家で生き残るのは大変なことなのね)

父にあれだけ言わせるのだ。
きっとオリヴィアが経験した戦場よりも厳しいことが待ち受けているに違いない。
ロベールの目的がわかったオリヴィアが覚悟を決めて顔を上げた。


「わたしがエンバルト公爵邸で妻としている間は、ディルムーン辺境伯家の援助をしていただけるんですよね?」

「ああ、十分な額を出すつもりだ」

「ありがとうございます。それから離縁のあとも辺境伯家に悪い影響が及ばないようにお願いいたします」

「……わかった。約束しよう」
 

ロベールのまとっていた緊張がほぐれたことで、先ほどの答えで正解だったのだと悟る。
オリヴィアは胸元を押さえてホッと息を吐き出した。


「生きていればな……」

「……え? 今、何か……?」
彼が立ち上がるとオリヴィアの前へ。


一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
膝をついたロベールは困惑するオリヴィアの手を取り、そっと手の甲に口付けた。


「…………へ?」


口付けた後にこちらを見るロベールに戸惑ったオリヴィアはどう反応すればいいかわからずに、反射的に手を引っ込める。

(怖っ……何でこんなことをするの!?)

警戒心むき出しのオリヴィアに、ロベールは口元を押さえながら肩を揺らしていた。
何をしているかと思いきや笑っているのだと気づいて、抗議するように声を上げた。


「いきなりなにをするんですか……!」

「もう俺たちは夫婦だ。このくらいは当然だろう?」


少年の姿で言われても、説得力はない。

(いつ姿を変えるのかしら……もしかして、ずっとこのまま?)
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