余所者-よそもの-【 3 】
ドサ、と床に崩れ落ちたママ。
落下の衝撃に顔をしかめることもなく、ただただ首を横に振り続けた。
やがて、静止すると。
「………」
眉を下げ、悲しそうな顔で。
僕を、真っ直ぐに見つめた。
「……千景。せっかく来てくれたのに、ごめんね」
その瞬間。
黒い影がすっと引くように、瞳からドラッグの濁りが消えた。
僕のよく知っている、優しく澄んだママの目だった。
「私、帰れないの」
「こんなところに居ちゃダメだ」
「千景の言う通りだった。シド、おかしくなっちゃった」
「うん。だから早く、」
「だから」
僕の声に被せるように、ママは掠れた声で、静かに言った。
「私は帰らない。……ここで守りたいの。大切なもの」