余所者-よそもの-【 3 】

67話:怪物



そこに居たのは、いつものリンコじゃない。

見ているだけで、身が竦んでしまうほど……荒々しい姿。


リンコは立ち上がったデックに、――ゴウッ、と音が出る程、大きな拳を振り下ろした。

まともに食らってガクガクと脚を震わせながら、それでもその場に踏ん張るデック。


地下の売人は、そんな二人を冷たい目で眺めていた。

何か考えるように、じっと。


「………」


だけど、それも一瞬の時間だった。


「デック」

「あいぃ……」

「お前、ちょっと死んで」

「……よろこんで」


リンコの攻撃を受けながら合間に交わす、不穏な二人のやり取り。

なぜかデックは『死んで』の指示に高ぶったように、ひと際強い一撃をリンコに浴びせた。


「――ウゥッ……!」


デックの突くような蹴りに、リンコの身体が後ろに吹っ飛び、寝室から見えなくなる。


「んじゃ、逝ってきますぅ」


デックは壊れていく自分の身体を予感して、かつ、それを喜んだように口端を釣り上げた。


その異様な光景を目の当たりにした瞬間、私の視界がグルンと反転する。

気がつけば、私の身体は地下の売人の肩へ担がれていた。


彼は小さく「……チ、」と舌打ちをして、

「誤算だ」

と呟いてから、多少駆け足になって寝室を出る。


後ろからは、けたたましい物音と、獣のような声が二つ。



「……退ッけェェェェ……!!」

「『死んで』も通さないぃ……!!」


「……カナコッ!!」



私を引き戻そうとするような、リンコの絶叫を聞いたのと同時。

――ガチャン、と玄関のドアの閉じる音が、耳のすぐ近くで無機質に響いた。


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