余所者-よそもの-【 3 】


「じゃあ、少し水分摂って」


スポーツ飲料を手に取ったユキが、もう片方の腕で私の背中を抱き起こす。

キャップの開けられたボトルを口に運ぼうとするので、私はそれを手に持った。


「もう自分で飲めますよ」


少し上を向いて、口に少量を流し込む。

飲み終わってふと見れば、少し不安そうに眉を下げたユキと、目が合った。



「かぁこ」


「……はい?」



呼びかけに対する、返事。

彼から返ってきたのは、小さく零れた吐息だけ。


「………」


ユキは言葉なく、ただ、どこか嬉しそうに微笑んでいた。



「どうかしましたか?」

「……ううん。体調はどう?」

「少し怠い感じがしますけど、元気ですよ」


安心したように、ユキの肩から力が抜けた。

その様子を見て、私は思い切って口を開く。


「ユキさん」


私たちは……あの日のことを、まだ何も話せていない。

目が覚めてすぐに尋ねたけれど、「今は何も考えなくていい」と、抱擁だけが返ってきた。


< 4 / 364 >

この作品をシェア

pagetop