余所者-よそもの-【 3 】
「じゃあ、少し水分摂って」
スポーツ飲料を手に取ったユキが、もう片方の腕で私の背中を抱き起こす。
キャップの開けられたボトルを口に運ぼうとするので、私はそれを手に持った。
「もう自分で飲めますよ」
少し上を向いて、口に少量を流し込む。
飲み終わってふと見れば、少し不安そうに眉を下げたユキと、目が合った。
「かぁこ」
「……はい?」
呼びかけに対する、返事。
彼から返ってきたのは、小さく零れた吐息だけ。
「………」
ユキは言葉なく、ただ、どこか嬉しそうに微笑んでいた。
「どうかしましたか?」
「……ううん。体調はどう?」
「少し怠い感じがしますけど、元気ですよ」
安心したように、ユキの肩から力が抜けた。
その様子を見て、私は思い切って口を開く。
「ユキさん」
私たちは……あの日のことを、まだ何も話せていない。
目が覚めてすぐに尋ねたけれど、「今は何も考えなくていい」と、抱擁だけが返ってきた。