余所者-よそもの-【 3 】
もみ合いになっている、千景と野間。
すれ違いざまに、二人の会話が耳に入ってきた。
「こちらの目的は果たした。今すぐにゼットを引かせるなら多少手加減しますよ。どうします?」
「まだだ。まだ終わってない」
「……あんた、ここでZ地区ごと死ぬ気ですか」
「命なんか要らないっ!!」
千景のその言葉に、私はハッとして振り返った。
「千景……?」
彼は力の入らない右腕を盾にして、野間の攻撃を遮っていた。
それでも防ぎきれず、何度も、何度も、顔面を殴りつけられながら、
ただひとつ満足に動く左腕は、拳を握ることなく。
――まっすぐに、私に向かって伸ばされていた。
『ママ』
声にならない唇が、何度も、何度も、私を呼ぶ。
「………」
私は震える声を振り絞り、必死で伝えた。
「千景。逃げて……」
「………」
「お願い。私は大丈夫だから」
「………」
「また、遊ぼ」
そうやって、千景と離れていく背中からは。
ずっと、ずっと。
声にならない千景の声が、響いていた。