真夏の一夜は恋の始まり(新装版)
 「お酒飲みすぎないでね。」

 そう言って私は2人にお酒を提供した。心配する気持ちもあったけど、2人は辿々しいながらも悪い雰囲気ではない。

 「まあ今日くらいいいじゃないか。」

 お父さんは大一にお酒を注ぎ、2人はお互いにお酒を注ぎ合った。

 二人はお酒が入ると緊張がとれたのか、普通に話し始めた。

 「9年前に母親が亡くなって、それから家のことから弟の世話まで、全部花凛に任せっきりでした。今も私を気にして甲斐甲斐しく家のことをやりにきてくれて…。この子には苦労をかけました。」と言っていつになくお父さんは饒舌に喋り出した。

 私別に苦労なんかしてないよ。と口を挟もうとすると、お父さんはまた話を続けた。

 「娘には悲しい思いはしてほしくないし、苦労もしてほしくないし、幸せになって欲しいと思っています。この子を宜しくお願いします。」

 お父さんは大一に深々とお辞儀をした。

 お父さんそんな風に思っていた事に驚いた。どうしよう⁇そんな事言われたら私泣きそうだ。お父さんがそんなこと言うと思わなかった…。

 「お父さん、私別に苦労なんてしてないよ。家のことをやるのも別に嫌じゃなかったし、稔の世話も別に大変じゃなかったよ。実家に帰るのもたまには実家に帰りたいからだよ。」

 泣きそうになりながら言葉を発する私の肩に大一が優しく触れた。
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