真夏の一夜は恋の始まり(新装版)
 〜長内side〜


 「私はそんなつもりはなくて、これは事故みたいなものなので…。」

 あの夏の日そう言われて俺は花凛に振られ、それを忘れたくてより訓練に励んだ。

 宮内さんから「あの後どうなった⁇」と聞かれたけど、別に何もありませんでしたと嘘をついた。
 一日消防訓練で偶然出会ってしまい、俺は正直動揺した…。でも、同僚には知らない人ですと答えた。
 振られた相手ですとは恥ずかしくて言えないからだ。花凛も俺の事なんかもう気にしていないようだ。
 俺は忘れ去られた存在なんだろうなと寂しく思いながら仕事に専念する事にした…。

 「あの先生可愛い。彼氏とかいるのな⁇俺聴きにいっちゃおうかな⁇」
 
 同僚達が花凛を見て沸き立っている。

 「おい。止めとけ。仕事に集中しろよ。」

 俺は少しムッとした態度で同僚達に仕事に戻るように言った。忘れないといけないのに、まるでまだ気持ちがあるかのようにイライラする自分がいる。
 これは嫉妬なのだと、自分でも気付いていた。思っていてもしょうがないのに、女々しい自分に気付きたくなくて、俺はより仕事に打ち込んだ。

 仕事も終盤になり、俺達は後片付けをして撤収の準備をした。花凛が倉庫に入っていくのが見えて、俺は思わずそうっと後をつけた…。

 荷物がバラバラと落ちてきて花凛にぶつかりそうになる⁈

 「危ない⁈」

 俺は咄嗟に落ちてくる荷物から花凛を庇っていた。

 「また助けられましたね。」

 そう言われ、ドキンと俺の心臓が鳴った。花凛は俺の事を忘れていたわけではなかったのだと嬉しくなった。
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