追放先で再会した初恋の男は、罪深い私を愛し続ける 〜断罪令嬢エリザベートの初恋回帰〜
第一章
追放
「エリザベート・フランドール。お前の処遇について、身分剥奪のうえルキリュ領ディート地区への追放を言い渡す」
その日、朝の眩い日差しが差し込むシルドバーニュの王城にてエリザベートは刮目していた。
想像よりも軽い刑罰に対する驚きを孕んだものだった。
処分を言い渡したのは、国王の死去によって臨時で国座に就いているベルナルド王太子殿下である。
彼の人となりを表す厳粛な物言いに対し、エリザベートは寛大な処遇への動揺を隠すべくアイスブルーの瞳を伏せる。
「調査の結果、お前の罪は妹ヒストリアを大聖女の座から引き摺り下ろすため、王妃殺害未遂の冤罪を計画したことのみと判断した」
妹を陥れようと画策したことは事実。
ベルナルドが告げた王妃殺害未遂は紛れもなくエリザベートが計画したものである。
瘴気が蔓延するこの世界で、聖女は結界を張り、土地を癒す特別な存在だった。
なかでも特に、聖なる力が強い特別な聖女は印が発現し大聖女と呼ばれている。
エリザベート・フランドールは、聖女信仰の厚い大国シルドバーニュの侯爵家に生まれ、そして妹は大聖女だった。
フランドール家は歪だった。
女侯爵だった母が早々に死去し、性根の腐った父の支配下にあり、妹は傲慢。
父の色に染まり、大聖女という権威を振りかざすだけで努力もせず他人を顧みない。
エリザベートの目から見て、妹は大聖女に相応しくなかった。
ろくに聖力の制御が出来ないことを指摘されればヒステリックに喚くばかりで、印があるからといって大聖女の地位を引き継いだところでこの国に混乱を招くだけだと思っていた。
――だから妹を聖女の頂から引き摺り下ろした。
その結果、エリザベートは断罪されている。
この結末はエリザベートにとって予期せぬものだった。
破綻するはずのなかった計画は、共謀していた同年の義兄妹であるロイドの暴走によって幕を閉じた。
フランドール家の害虫の破滅を望んだエリザベートと、王族貴族にまで恨みを募らせ踏み込んだロイド。ロイドは特別な力を使い王家の乗っ取りを目論んだのだ。
かつて二人は共謀関係にあったが、目的を見失い一線を越えようとしたロイドをエリザベートは見限った。
エリザベートの目的はあくまで父と妹の破滅。
国の平穏を乱す行為は望んでいなかったのだ。
そして、傲慢さを高潔なプライドへと昇華させ成長した妹によってロイドは倒された。
当然、妹ヒストリアに対する冤罪も白昼の下となり、エリザベートは裁判にかけられた。
そのため処遇が言い渡されるまでは極刑を覚悟していたが、しかし蓋を開けてみれば身分剥奪と辺境送り。
ベルナルドはエリザベートの心の内を見透かすように続けて言った。
「――国王の殺害、ならびに国家存続の危機を引き起こしたロイド・フランドールとの結託に関しては、無実とする。お前はロイドの暴挙を阻止すべく隠密行動を取り、私は命を救われた。のちにヒストリアらに助力し国の崩壊を防いだ事実も鑑みた結論である」
極刑が決まったロイドに憐憫を抱きながらエリザベートは判決を粛々と聞き受け頭を下げる。
なにもかも諦め、国家を脅かさんとするロイドを止めるため行動し続けてきたが、ついに終わったのだ。
国を思えば、これでよかった。被害は最小限で済んだのだ。
しかしエリザベートの心は濁ったままだ。
今まで何をしていたのだろう。
放心と後悔がさざ波のように心を揺らす。
これからはシルドバーニュ北部の領土を統治するラキュウス辺境伯の監視下の元、平民として暮らす事となる。
それは皮肉にも妹ヒストリアが冤罪で追放された地と同じ場所だった。
その日、朝の眩い日差しが差し込むシルドバーニュの王城にてエリザベートは刮目していた。
想像よりも軽い刑罰に対する驚きを孕んだものだった。
処分を言い渡したのは、国王の死去によって臨時で国座に就いているベルナルド王太子殿下である。
彼の人となりを表す厳粛な物言いに対し、エリザベートは寛大な処遇への動揺を隠すべくアイスブルーの瞳を伏せる。
「調査の結果、お前の罪は妹ヒストリアを大聖女の座から引き摺り下ろすため、王妃殺害未遂の冤罪を計画したことのみと判断した」
妹を陥れようと画策したことは事実。
ベルナルドが告げた王妃殺害未遂は紛れもなくエリザベートが計画したものである。
瘴気が蔓延するこの世界で、聖女は結界を張り、土地を癒す特別な存在だった。
なかでも特に、聖なる力が強い特別な聖女は印が発現し大聖女と呼ばれている。
エリザベート・フランドールは、聖女信仰の厚い大国シルドバーニュの侯爵家に生まれ、そして妹は大聖女だった。
フランドール家は歪だった。
女侯爵だった母が早々に死去し、性根の腐った父の支配下にあり、妹は傲慢。
父の色に染まり、大聖女という権威を振りかざすだけで努力もせず他人を顧みない。
エリザベートの目から見て、妹は大聖女に相応しくなかった。
ろくに聖力の制御が出来ないことを指摘されればヒステリックに喚くばかりで、印があるからといって大聖女の地位を引き継いだところでこの国に混乱を招くだけだと思っていた。
――だから妹を聖女の頂から引き摺り下ろした。
その結果、エリザベートは断罪されている。
この結末はエリザベートにとって予期せぬものだった。
破綻するはずのなかった計画は、共謀していた同年の義兄妹であるロイドの暴走によって幕を閉じた。
フランドール家の害虫の破滅を望んだエリザベートと、王族貴族にまで恨みを募らせ踏み込んだロイド。ロイドは特別な力を使い王家の乗っ取りを目論んだのだ。
かつて二人は共謀関係にあったが、目的を見失い一線を越えようとしたロイドをエリザベートは見限った。
エリザベートの目的はあくまで父と妹の破滅。
国の平穏を乱す行為は望んでいなかったのだ。
そして、傲慢さを高潔なプライドへと昇華させ成長した妹によってロイドは倒された。
当然、妹ヒストリアに対する冤罪も白昼の下となり、エリザベートは裁判にかけられた。
そのため処遇が言い渡されるまでは極刑を覚悟していたが、しかし蓋を開けてみれば身分剥奪と辺境送り。
ベルナルドはエリザベートの心の内を見透かすように続けて言った。
「――国王の殺害、ならびに国家存続の危機を引き起こしたロイド・フランドールとの結託に関しては、無実とする。お前はロイドの暴挙を阻止すべく隠密行動を取り、私は命を救われた。のちにヒストリアらに助力し国の崩壊を防いだ事実も鑑みた結論である」
極刑が決まったロイドに憐憫を抱きながらエリザベートは判決を粛々と聞き受け頭を下げる。
なにもかも諦め、国家を脅かさんとするロイドを止めるため行動し続けてきたが、ついに終わったのだ。
国を思えば、これでよかった。被害は最小限で済んだのだ。
しかしエリザベートの心は濁ったままだ。
今まで何をしていたのだろう。
放心と後悔がさざ波のように心を揺らす。
これからはシルドバーニュ北部の領土を統治するラキュウス辺境伯の監視下の元、平民として暮らす事となる。
それは皮肉にも妹ヒストリアが冤罪で追放された地と同じ場所だった。