〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
1、雲の上の人
「検査の結果ですが、やはり溶連菌が出ました。保育園でも少し流行しているとのことだったので調べて正解でした。今日は、お薬を出しますね」
「わかりました」と頷く母親のとなりで、「やだぁ」と縋るように腕にしがみつく。
子どもにとって服用は一大事。この子には薬は不味いものという認識なのだろう。
たまに薬が美味しいと喜ぶ子もいる。シロップ系の医薬品は飲みやすく甘く作られているため、親の管理が不可欠。必要な服用以上に子どもが勝手に飲んでしまうという例もたまにある。
今回処方するのはセフェム系の抗生物質で、苦味があるものだ。お世辞にも美味しいとはいえない。
「頑張ってお薬飲んだら良くなるからね」
「……にがい?」
「そうだね、ちょっとだけ」
ごまかさず、嘘はつかない。
もしこの場を誤魔化しても、いざ薬を飲んで不味ければ病院の先生は信用できないと思われてしまう。
それは私だけにとどまらず、医師に対する不信感に繋がる。
「粉状のお薬なんですが、水を二、三滴入れてこねてもらうと団子状になるので、かたまりにして飲ませてしまうのがいいと思います」
薬の飲み方を母親に説明し、診察を終了した。