彼らの夏が終わる
 練習が終わり、メイサがノートにメモをまとめていると、藤也が後ろから覗き込んできた。


「どうだった?」

「悪くないよ。でも藤也は元々運動部じゃないからね。こう……運動部らしい体の動かし方に、まだ慣れてないでしょ」

「……うん」


 藤也は唇を尖らせて、メイサの後ろから抱きついた。

 メイサは抱きつかれたことなど気にも留めず、ノートを閉じた。


「そういえば、男子の部室の掃除、終わった?」

「……半分くらい」


 藤也の表情が一気に暗くなった。


「マジありえない。普通に虫いるし、臭いし」

「あらら」

「とりあえずゴミ捨てて換気まではしたけど、まだ細かいゴミも残ってるし、殺虫剤も足りてないし……」

「ご苦労様です」

「ほんとだよ、ねぎらって」

「よしよし」


 メイサは手を伸ばして藤也の頭を優しく撫でた。すると何かを思い出したように、ポケットから細く編まれた紐を取り出す。


「これ、あげる。アミュレット……ミサンガ……まあ、なんでもいいけどお守り」

「お守り? あ、テレビで見たことある」


 藤也は目を輝かせてミサンガを受け取った。黄色を基調に、何本もの細い紐が丁寧に編み込まれている。


「つけてあげるね」


 メイサは藤也から離れて、彼の手首にミサンガを巻いた。

 結び目を確かめるように満足げにうなずき、藤也の手をそっと取った。


「初めて作ったけど、うまくいってよかった。あのね、(ひいらぎ)ちゃんと作ったんだよ」


 藤也の顔が引きつった。メイサと(ひいらぎ)莉子(りこ)は仲が悪い。知り合った経緯が最悪だったこともあり、互いに「お前なんか嫌いだ」と面と向かって言い合うほど犬猿の仲だった。


「ど、どういう風の吹き回しだ……?」

「どうってこともないよ。柊ちゃんが一ノ瀬に作りたいって言うから、うちでミニオン見ながら一緒に作ったの」

「……だから黄色いのか。待て、一ノ瀬先輩も同じやつ持ってんの? あの人とお揃いとか嫌だけど?」

「大丈夫だよ、柊ちゃんが作ったやつのほうがどう見ても上手だから」

「なんも大丈夫じゃねえ……でも、うん。ありがとう。大事にする」


 藤也は手首に巻かれた黄色いミサンガをそっと撫でた。
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