拗らせ俺様が犬系彼氏になった理由
そのまま浩一が華を抱きしめたので、必死で華は拒絶する。
「やめて、離して!」
「華が何て言ってもさ。証拠が残ってればあの男もさすがに信じないよ」
「証拠って……それあなたが無理やりしてる証拠にもなるけど!?」
「馬鹿だなあ。華が俺の家に来てるんだよ? それだけで十分合意があったって思われるでしょ。あの大島って子も、俺たちが抱き合う写真撮ってたしね」
あまりの展開に、華はもう言葉もなかった。
もう半ば自暴自棄になってるんだろうか。結婚の話も、親も友人も失い、我を見失っているのだ。
こんなことをしても華が戻ってこないなんて、普通に考えたら分かること。でも彼は『普通に考える』ことすら出来ない。
「ふざけないで!」
「華が自ら俺の家を訪ねてきて、食事をして、抱き合っていればもう十分、俺たちは復縁したってことだよね」
「食事なんてしてないしあんたが勝手に抱き着いてるだけでしょう!? 何で全部都合がいいように考えられるの? お願いだから冷静になって……!」
必死に華がそう言っていると、浩一がポツリと言った。
「俺は冷静だよ……ずっと冷静に、華の事を考えてる」
浩一の正気を失ったその目を見て、華は『あ、もう無理かもしれない』と思った。
完全に頭のねじが飛んでしまっている。彼にはきっともう何も通じない。自分が正しいと思い込んで、他のことに考えが及ばないのだ。
(……助けて)
力ではどうしても敵わない。どうしたら逃げ出せるのだろう。
浩一は華の髪を撫でる。愛おしそうなその手つきに嫌悪感を抱いた。
(……深見さん……!)
ピンポーン
インターホンの音が鳴り響く。
ハッと浩一の動きが止まる。その一瞬の隙を、華は逃さなかった。
「助けて!!」
声の限り叫ぶと、浩一が慌てた様子で華の口を手で塞ぐ。
誰がいるのか分からないけれど、どうかさっきの叫びに気が付いていてほしい。異常を感じて警察を呼んでくれたら……!
もはや祈ることしか出来ない華の耳届いたのは、ガチャっと玄関の音が開く音だった。それが華にとって、何よりも救いの音に聞こえる。そして、思い出したのだ。
(……そっか、さっき……)
美鈴が去った後、浩一はそのまま自分をリビングへ連れてきた。彼は玄関の鍵を掛けていないのだ。
「佐々山さん!!」
中に飛び込んできた人を見て、華は目を真ん丸にした。自分が今一番来てほしい人を想いすぎて、幻覚を見たのかと疑ってしまったくらいだ。
やってきたのは汗をかいた朔弥だった。凄い形相で入って来た朔弥は、華と浩一を見つけて唖然とする。だが驚いたのは浩一もだった。
「は……なんで、お前……」
突然やって来た朔弥の存在に、浩一もぽかんとしている。
次の瞬間、朔弥が浩一を殴り飛ばした。普段ニコニコして可愛らしい朔弥とはまるで別人のような恐ろしい顔で、怒りに震えている。
浩一はなすすべもなく、床に倒れこむ。
「お前……なにやってんだよ!!」
拳を震わせながら朔弥が叫んだ。
一体なぜ朔弥がここにいるんだろう、そんな疑問も頭にあったけれど、それよりも安心感が勝ち、華の目から突然どっと涙がこぼれた。今更恐怖が襲ってきて体が震える。それに気が付いた朔弥が、すぐに華に寄り添った。
「やめて、離して!」
「華が何て言ってもさ。証拠が残ってればあの男もさすがに信じないよ」
「証拠って……それあなたが無理やりしてる証拠にもなるけど!?」
「馬鹿だなあ。華が俺の家に来てるんだよ? それだけで十分合意があったって思われるでしょ。あの大島って子も、俺たちが抱き合う写真撮ってたしね」
あまりの展開に、華はもう言葉もなかった。
もう半ば自暴自棄になってるんだろうか。結婚の話も、親も友人も失い、我を見失っているのだ。
こんなことをしても華が戻ってこないなんて、普通に考えたら分かること。でも彼は『普通に考える』ことすら出来ない。
「ふざけないで!」
「華が自ら俺の家を訪ねてきて、食事をして、抱き合っていればもう十分、俺たちは復縁したってことだよね」
「食事なんてしてないしあんたが勝手に抱き着いてるだけでしょう!? 何で全部都合がいいように考えられるの? お願いだから冷静になって……!」
必死に華がそう言っていると、浩一がポツリと言った。
「俺は冷静だよ……ずっと冷静に、華の事を考えてる」
浩一の正気を失ったその目を見て、華は『あ、もう無理かもしれない』と思った。
完全に頭のねじが飛んでしまっている。彼にはきっともう何も通じない。自分が正しいと思い込んで、他のことに考えが及ばないのだ。
(……助けて)
力ではどうしても敵わない。どうしたら逃げ出せるのだろう。
浩一は華の髪を撫でる。愛おしそうなその手つきに嫌悪感を抱いた。
(……深見さん……!)
ピンポーン
インターホンの音が鳴り響く。
ハッと浩一の動きが止まる。その一瞬の隙を、華は逃さなかった。
「助けて!!」
声の限り叫ぶと、浩一が慌てた様子で華の口を手で塞ぐ。
誰がいるのか分からないけれど、どうかさっきの叫びに気が付いていてほしい。異常を感じて警察を呼んでくれたら……!
もはや祈ることしか出来ない華の耳届いたのは、ガチャっと玄関の音が開く音だった。それが華にとって、何よりも救いの音に聞こえる。そして、思い出したのだ。
(……そっか、さっき……)
美鈴が去った後、浩一はそのまま自分をリビングへ連れてきた。彼は玄関の鍵を掛けていないのだ。
「佐々山さん!!」
中に飛び込んできた人を見て、華は目を真ん丸にした。自分が今一番来てほしい人を想いすぎて、幻覚を見たのかと疑ってしまったくらいだ。
やってきたのは汗をかいた朔弥だった。凄い形相で入って来た朔弥は、華と浩一を見つけて唖然とする。だが驚いたのは浩一もだった。
「は……なんで、お前……」
突然やって来た朔弥の存在に、浩一もぽかんとしている。
次の瞬間、朔弥が浩一を殴り飛ばした。普段ニコニコして可愛らしい朔弥とはまるで別人のような恐ろしい顔で、怒りに震えている。
浩一はなすすべもなく、床に倒れこむ。
「お前……なにやってんだよ!!」
拳を震わせながら朔弥が叫んだ。
一体なぜ朔弥がここにいるんだろう、そんな疑問も頭にあったけれど、それよりも安心感が勝ち、華の目から突然どっと涙がこぼれた。今更恐怖が襲ってきて体が震える。それに気が付いた朔弥が、すぐに華に寄り添った。