悪魔は夜に笑う
落ち着いた私は婚約指輪の観察をして、数十枚もの写真を撮った。
シンプルなデザインのプラチナの指輪。
帰って明るい所で見てもいいけど、今感動が最高潮の時に写真に収めておきたい。

最後に星空をバックに、左手の薬指に通した婚約指輪の写真を撮ろうと奮起する。
しかし被写体を指輪に合わせると星が見えず、星空に合わせると指輪が暗くなって諦めた。

蒼士郎くんはそんな私を被写体にしてスマホを構えていることにその時初めて気づいた。
いい写真を撮ろうと奮闘していた姿がおもしろかったに違いない。
だって悪魔のような笑みを浮かべて楽しそうだ。

その笑みを保ったまま、私の左手を握り顔に近づけて、今度は蒼士郎くんが婚約指輪を観察している。


「それにしても、なんで私のキューピットの能力、蒼士郎くんに効かなかったんだろう」


ふと気になって質問を投げかける。
誰しも運命の相手を選んだのに、蒼士郎くんは惑わされず、機会があれど一切見向きせず私を選んだ。


「悪魔だから通用しなかったんじゃない?」

「そういうことか」


科学的根拠はないけれど、妙に的を得た回答が導き出され私はあっさり納得した。
悪魔の本質は誘惑。いくらキューピットに唆されてもなびかないはずだ。
ある意味、逆説的に運命で結ばれていたのかもしれない。

私を射止めた美しい悪魔は、満天の星空の下で輝くような笑みを見せた。




END
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