悪魔は夜に笑う
「愛結那さん、俺と結婚して」


続けてその口から発せられた言葉が魔法のように私の動きを止める。

結婚なんて、私には夢物語だと思ってた。
うっすらと常にまとわりついていた諦め。
それを覆す目の前の彼の行動に動揺が隠せない。

蒼士郎くんだって、性格上人目につくような行動は嫌がるはずなのに。
私のためならベタでロマンチックなプロポーズをしてくれるんだ。
いろんな感情が押し寄せて泣きそうだった。


「はい、喜んで!」


泣き出してしまう前に精一杯の笑顔で承諾の返事をする。
だけど限界で、急激に目頭が熱くなって涙があふれた。

勢いのある返事が流れ星より目立って周囲の注目を集める。
涙でぼやけた視界の中で「プロポーズ?」などとざわめく声が聞こえる。

蒼士郎くんが泣いている私に気づいて立ち上がって優しく抱きしめる。
するとそのざわつきが「おめでとう」という祝福の声に変わった。

夢じゃないんだ。嬉しくて蒼士郎くんの胸の中でさめざめと泣いた。
蒼士郎くんは泣き止むまで寄り添ってくれた。


「あゆなさん、落ち着いた?……何その顔」


5分は涙が止まらなかった。
気づけば私たちに注目していた人々も、無数の流れ星に夢中になっている。
蒼士郎くんに顔をのぞき込まれ、変な顔だと言いたげに何その顔、と呟かれた。


「言葉にすると重みが違うというか……現実味を帯びるというか……」

「まだ混乱してるのおもしろ」


嬉しいのに信じられなくてまさに混乱している。
だけど私を見つめるその瞳が星々よりも美しく見えて、夢でもいいとすら思えた。

他人の愛を人知れず結んで自分は結ばれないなんて、散々な人生だと思ってた。
だけどあの経験があるからこそ、今が輝いて見える。
悲しくても苦しくても七転び八起き。
これからはふたりで、面白おかしく転がって生きていけたら大満足だ。
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