食事のたびに目が合うイケメン営業課長は、どうやら食べることが好きらしい(?)

食事のたびに目が合うイケメン営業課長は、どうやら食べることが好きらしい(?)

 ――あっ、まただ……。

 私、小南真冬(こなみまふゆ)は口に運ぼうとしていたハンバーグを皿に戻した。
 最近、同じ(あかつき)商事に勤める営業部課長の初瀬慎(はつせしん)さんとよく目が合う。

 私が座っているところから三つ離れた大きなテーブルに座る初瀬課長は、私と目が合うなりパッと視線を逸らした。
 何食わぬ顔でお味噌汁のお椀を傾けているけれど、こうして彼と目が合うのは一度や二度ではないので、その仕草が誤魔化しであることにはもう気付いている。

 初瀬さんと私に接点はない。同じ暁商事に勤めているというだけで、彼が営業課長だから私が一方的に知っているだけだ。あと、優しくてイケメンだと専らの噂で、確かに遠くから見ても彼の顔は整っている。
 真っすぐ通った鼻筋とキリッとした目元はモデルみたいで、どこぞのファッション誌から飛び出してきたような格好良さだ。

 だから私は彼のことを知っているけれど、向こうは五つも歳が離れた資材調達部にいる私のことなど、知りもしないだろう。
 実際、暁商事には私のような事務職員がたくさんいる。国内外に拠点があり、幅広く事業を展開しているから、部署が違えば顔を合わせることもほとんどない。
 だけど、昼時になると多くの社員がビルの三階にあるレストランまで降りてくるので、ちらほらと見知った顔を見かけることはあった。

 ちなみに暁商事が入る高層ビルには他の企業も多数籍を置いていて、全員が同じ会社の社員というわけではない。外部の人も利用できるレストランなので、昼時には多くの人で賑わいを見せている。
 つまり、意図的にでもない限り、互いの姿が目に入る場所を選び続けることは不可能なのだけれど……。

「なぜか、いつも視線の先にいるんだよね……」

 たまたま(・・・・)で片付けるには少々難しいレベルだ。

 先ほど食べ損ねたハンバーグを口に運んだら、また彼と目が合った。

「うぅ……。食べづらい……」

 そう小さく呟いて、今度は控えめに口を開く。

 明日からはもっと人が密集しているテーブルに座ろう。
 いっそのこと窓際のカウンター席もいいかもしれない。絶対に目が合わないし。

 ……と思っていたのに。

「すみません、お隣いいですか?」

 そう声を掛けた相手がまさかの初瀬さんで、私はヒュッと息を呑んだ。

「えっと……どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 私は引き攣りそうになる口角を無理やり引き上げて、彼の隣にトレイを置く。

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