死の呼び声
第七話 奇蹟の出会い
明るいうちに出発した為、体力強化の付与で走り続け、馬車の休憩所を何か所も通り過ぎてエルソンへ急いだ。時間は流れ、もう夕方に近くなっていた。そろそろ休憩しようかと思っていた矢先だった。
五か所目の馬車休憩所にテントが張ってあるのを見つけた。
迷わずそこで休憩することに決めた。冒険者の鉄則、一人より二人、二人より三人。
万が一の魔獣に襲われることで命を落とす危険性、回避するためには互いに協力し合うのが鉄則だ。但し、進む方向が一致していればの話だ。
テントを張っている人がエルソンへ行く旅の途中だと一緒に行けるから幸運だ。分岐点も少ない街路ゆえに二分の一の確率で期待できる。
しかもこれから夜の帳が降りる。
キャンパーにもよるが安全も確保できそうだ。
馬車休憩所に近づくにつれ走るスピードを落とした。そしてゆっくりな歩行にしてテントに近づく。走っている時には見えなかったが、テントの向こう側に一人の若い男性が座っているのが見えた。
普通のシャツにズボンを着た珍しい黒髪の男性で、ほっそりしているが鍛えられた筋肉の腕が長袖をまくっている為に見えた。冒険者かも知れないが防御プレートなど防具を付けていなかったので、今は外しているのか、少々危機管理に甘そうな印象を持った。
テントの近くまで行き、声を掛けてみた。
「あの、すみません。おひとりですか?」
僕の声に振り向いたのは爽やかそうなショーユ顔の、遠目で見た通りのイケメン男性であった。
『はい、ボクは一人です。あなたも一人ですか? なら食事でもご一緒しましょう』
丁寧な物言いの若者だった。
僕より年下かも知れない。いや同じぐらいかもしれない。
「急に声を掛けてすみません。僕も一人なので助かります。食事なら沢山持って来てますので、是非ご一緒したいです。僕はタープといいます。D級冒険者をしています」
『はい、遠慮なく隣にテントを張ってください』
「ありがとうございます」
僕は自己紹介をした後でチラっと彼の顔を見る。ニコニコしていて親しみが持てる笑顔をしていた。全体の雰囲気には優しさが滲んでいて、魔獣に襲われたら大丈夫かと思ってしまう優男という印象を持った。
一方、彼の座っている横には、防具を着用していない服装にも関わらず、ひときわ豪華な剣が置かれていた。かなり高価な品物と思えた。指摘するのも何なので、そこはスルーした。
「夕飯、何にしましょうね?」
『ビーフシチューが出来ますから肉類をお持ちなら是非。あと焼肉しましょう』
「あ、はい。では、飲み物を用意しながら調理を協力しますね」
『ボクがささっとやりますから、疲れを取ることを優先してください』
「え、いいんですか?」
『ボクは体力が温存できているのと料理が好きなので』
そんな風に人懐っこい顔で笑顔を見せつけられる。ミキが見たら一目惚れしそうなぐらいの格好いい男だった。いっぱしの男子としてこの格好良さに嫉妬しつつ、テキパキと準備をし始めた。
彼はさりげなくテント設営時に荷物運びを手伝ってくれた。
◇
「料理上手だね。焚火の扱いも上手いし」
僕は夕食を食べながら彼に掻い摘んで話をしていた。
すでに口調はタメ口になっている。
「僕の所属する冒険者ギルドのある田舎町に異変が起きて、次の日には誰も異様な出来事を記憶に残していなかったんだ」
『住人たちは異変の記憶が残らず、毎日を繰り返し過ごしているんだね?』
「うん。それで僕の幼馴染のミキだけが記憶が残っている感じで会話が出来た。そしてエルソンのような大きな街のギルドへ行って知らせてくれと」
ミキが住民たちを誘導しているスキャットの声とか、ブラッコスやシローキの話は省いた。趣旨は早く助けを呼んで、異常な問題を片付けることだと考えたからだ。特に問題はないだろう。
そもそもミキが親玉の黒幕として討伐されても嫌だからであった。討伐の前には自分が救い出したいと強く思っていた。そして告白して恋人同士になりたかった。
「救いたいんだ、幼馴染を。ところでキミは?」
『ボクはパーティの皆に置き去りにされてしまってね、酷いよ、ははは』
「そうか、災難だな……」
『ボクが道に迷ってても助けに来ないなんて……ぐすん涙』
凄いイケメン優男なのにナイーブな印象が加わった。
「どうする? エルソンへ一緒に行くか?」
『そうだね、でも、異様で不思議な問題が起きているらしいタープ君の町に戻らないかい?』
「僕は先にエルソンまで知らせに行かないといけないから無理だな」
『じゃ、ボクはタープ君の町に行ってみるよ』
「危険だぞ?」
『明るい間は住人たちに記憶はないんだよね、なら大丈夫』
「なぁ、その恰好なんだけど、防具は付けないのか?」
『いい防具がなくてね、この方が動きやすくて』
「じゃ、今度、防具を見繕ってやるよ。防具をつけてないと冒険者たちから見下されるぞ」
『や、やっぱりかな』
「当たり前だ。次の機会にエルソンで道具屋巡りをしようぜ」
『せっかくの出会いだし、お世話になるよ』
「僕には妹がいてね。金髪の可愛い妹でさ」
『兄貴バカって言われない?』
「いや本当に可愛いんだよ。道具屋巡りの時に会わせてやるよ」
『ボクのパーティ仲間にもシスコンがいるんだよね』
こうやって何故かバカ話も盛り上がり、深夜に差し掛かった。
「じゃ、せっかく一緒にエルソンに行けると思ったけど朝にはお別れだな」
『うん、そうだね。エルソンの冒険者ギルドに行ったら仲間に伝言をお願いしてもいいかな?』
「いいぞ」
『それじゃ、置いてけぼりの件は夕飯奢ってよ! って』
「了解した。何だソレ、笑えるけどな。で、キミの名前は?」
『あ、ごめん、自己紹介してなかったね。サトシと呼んで欲しい』
「分かった。サトシ君な」
『呼び捨てで良いよ、サトシでよろしく』
「サトシ、よろしくな」
『よろしく、タープくん』
「僕にもタープ呼び捨てで」
『了解、タープ』
タープとサトシは手を握り合った。力強い握手だった。
◇
後日、ある田舎町に神々しい光が立ち昇り、全ての問題は解決されたという速報がエルソンの冒険者ギルドに入るのだが、エルソンまでの旅の途中だったタープの耳にはまだ届いていなかった。
★★★★★
サトシがタープの妹と出会って気に入られ、魔法の家庭教師を頼まれ、なぜかNTR危機になり、ミキが本当は大丈夫だったのか、黒(ブラッコス)白(シローキ)はどうなったのか、連載が再開できるまで今しばらく……闘病中です。
★ところで『脳破壊のNTR成分はない』と書いていましたが、思いっきりホテルの様子はNTRそのもの……でしたね……ふふ。本文で主人公が言及している通り、コーヒーをこぼしそうになっているだけです……ふふふ…… バタッ ←
五か所目の馬車休憩所にテントが張ってあるのを見つけた。
迷わずそこで休憩することに決めた。冒険者の鉄則、一人より二人、二人より三人。
万が一の魔獣に襲われることで命を落とす危険性、回避するためには互いに協力し合うのが鉄則だ。但し、進む方向が一致していればの話だ。
テントを張っている人がエルソンへ行く旅の途中だと一緒に行けるから幸運だ。分岐点も少ない街路ゆえに二分の一の確率で期待できる。
しかもこれから夜の帳が降りる。
キャンパーにもよるが安全も確保できそうだ。
馬車休憩所に近づくにつれ走るスピードを落とした。そしてゆっくりな歩行にしてテントに近づく。走っている時には見えなかったが、テントの向こう側に一人の若い男性が座っているのが見えた。
普通のシャツにズボンを着た珍しい黒髪の男性で、ほっそりしているが鍛えられた筋肉の腕が長袖をまくっている為に見えた。冒険者かも知れないが防御プレートなど防具を付けていなかったので、今は外しているのか、少々危機管理に甘そうな印象を持った。
テントの近くまで行き、声を掛けてみた。
「あの、すみません。おひとりですか?」
僕の声に振り向いたのは爽やかそうなショーユ顔の、遠目で見た通りのイケメン男性であった。
『はい、ボクは一人です。あなたも一人ですか? なら食事でもご一緒しましょう』
丁寧な物言いの若者だった。
僕より年下かも知れない。いや同じぐらいかもしれない。
「急に声を掛けてすみません。僕も一人なので助かります。食事なら沢山持って来てますので、是非ご一緒したいです。僕はタープといいます。D級冒険者をしています」
『はい、遠慮なく隣にテントを張ってください』
「ありがとうございます」
僕は自己紹介をした後でチラっと彼の顔を見る。ニコニコしていて親しみが持てる笑顔をしていた。全体の雰囲気には優しさが滲んでいて、魔獣に襲われたら大丈夫かと思ってしまう優男という印象を持った。
一方、彼の座っている横には、防具を着用していない服装にも関わらず、ひときわ豪華な剣が置かれていた。かなり高価な品物と思えた。指摘するのも何なので、そこはスルーした。
「夕飯、何にしましょうね?」
『ビーフシチューが出来ますから肉類をお持ちなら是非。あと焼肉しましょう』
「あ、はい。では、飲み物を用意しながら調理を協力しますね」
『ボクがささっとやりますから、疲れを取ることを優先してください』
「え、いいんですか?」
『ボクは体力が温存できているのと料理が好きなので』
そんな風に人懐っこい顔で笑顔を見せつけられる。ミキが見たら一目惚れしそうなぐらいの格好いい男だった。いっぱしの男子としてこの格好良さに嫉妬しつつ、テキパキと準備をし始めた。
彼はさりげなくテント設営時に荷物運びを手伝ってくれた。
◇
「料理上手だね。焚火の扱いも上手いし」
僕は夕食を食べながら彼に掻い摘んで話をしていた。
すでに口調はタメ口になっている。
「僕の所属する冒険者ギルドのある田舎町に異変が起きて、次の日には誰も異様な出来事を記憶に残していなかったんだ」
『住人たちは異変の記憶が残らず、毎日を繰り返し過ごしているんだね?』
「うん。それで僕の幼馴染のミキだけが記憶が残っている感じで会話が出来た。そしてエルソンのような大きな街のギルドへ行って知らせてくれと」
ミキが住民たちを誘導しているスキャットの声とか、ブラッコスやシローキの話は省いた。趣旨は早く助けを呼んで、異常な問題を片付けることだと考えたからだ。特に問題はないだろう。
そもそもミキが親玉の黒幕として討伐されても嫌だからであった。討伐の前には自分が救い出したいと強く思っていた。そして告白して恋人同士になりたかった。
「救いたいんだ、幼馴染を。ところでキミは?」
『ボクはパーティの皆に置き去りにされてしまってね、酷いよ、ははは』
「そうか、災難だな……」
『ボクが道に迷ってても助けに来ないなんて……ぐすん涙』
凄いイケメン優男なのにナイーブな印象が加わった。
「どうする? エルソンへ一緒に行くか?」
『そうだね、でも、異様で不思議な問題が起きているらしいタープ君の町に戻らないかい?』
「僕は先にエルソンまで知らせに行かないといけないから無理だな」
『じゃ、ボクはタープ君の町に行ってみるよ』
「危険だぞ?」
『明るい間は住人たちに記憶はないんだよね、なら大丈夫』
「なぁ、その恰好なんだけど、防具は付けないのか?」
『いい防具がなくてね、この方が動きやすくて』
「じゃ、今度、防具を見繕ってやるよ。防具をつけてないと冒険者たちから見下されるぞ」
『や、やっぱりかな』
「当たり前だ。次の機会にエルソンで道具屋巡りをしようぜ」
『せっかくの出会いだし、お世話になるよ』
「僕には妹がいてね。金髪の可愛い妹でさ」
『兄貴バカって言われない?』
「いや本当に可愛いんだよ。道具屋巡りの時に会わせてやるよ」
『ボクのパーティ仲間にもシスコンがいるんだよね』
こうやって何故かバカ話も盛り上がり、深夜に差し掛かった。
「じゃ、せっかく一緒にエルソンに行けると思ったけど朝にはお別れだな」
『うん、そうだね。エルソンの冒険者ギルドに行ったら仲間に伝言をお願いしてもいいかな?』
「いいぞ」
『それじゃ、置いてけぼりの件は夕飯奢ってよ! って』
「了解した。何だソレ、笑えるけどな。で、キミの名前は?」
『あ、ごめん、自己紹介してなかったね。サトシと呼んで欲しい』
「分かった。サトシ君な」
『呼び捨てで良いよ、サトシでよろしく』
「サトシ、よろしくな」
『よろしく、タープくん』
「僕にもタープ呼び捨てで」
『了解、タープ』
タープとサトシは手を握り合った。力強い握手だった。
◇
後日、ある田舎町に神々しい光が立ち昇り、全ての問題は解決されたという速報がエルソンの冒険者ギルドに入るのだが、エルソンまでの旅の途中だったタープの耳にはまだ届いていなかった。
★★★★★
サトシがタープの妹と出会って気に入られ、魔法の家庭教師を頼まれ、なぜかNTR危機になり、ミキが本当は大丈夫だったのか、黒(ブラッコス)白(シローキ)はどうなったのか、連載が再開できるまで今しばらく……闘病中です。
★ところで『脳破壊のNTR成分はない』と書いていましたが、思いっきりホテルの様子はNTRそのもの……でしたね……ふふ。本文で主人公が言及している通り、コーヒーをこぼしそうになっているだけです……ふふふ…… バタッ ←


