サヨナラを言う準備は出来ていた。
高校1年・夏
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勉強道具を通学鞄にしまっていると、目の前に誰かが立った。
顔を上げると、ショートカットが良く似合う女子生徒。最近見飽きつつある、日に焼けた笑顔が私を見下ろしている。
「矢部さん! 話があるんだけど、ちょっといいかな?」
いつもグラウンドの端から端まで響いているほど良く通る声で言われ、内心ため息をつく。ああ、またこのやり取りをしなくちゃいけないのか。
まだ教室に残っていたクラスメイトの視線が、私たちに集まるのを感じた。
「私は話すことはないんだけど、岡本さん」
「まぁまぁ、そう言わずにさ~」
鮮やかな青と白のジャージ姿の岡本沙和さんは、机に両手をつきにこにこと笑っている。
なぜこんな風に笑っていられるんだろう。私がどれだけ素っ気なくしても、岡本さんは笑顔を消さない。親しげな態度も変わらない。
ただ、私の中で罪悪感に似た気まずさが、どんどん積もっていくだけだ。