サヨナラを言う準備は出来ていた。
「見て。また岡本ちゃん来てるよ」
どこからか、そんな声が聞こえてきた。
窓際に集まってお喋りしている女子グループからだった。
「粘るよねぇ」
「矢部さんもいい加減応えてあげればいいのに」
どうしてそこで「岡本ちゃんもいい加減、あきらめればいいのに」という言葉は出てこないのか。
答えは簡単。私が嫌われているからだ。
反対に、岡本さんは明るく社交的で友だちが多い。クラスが違うのに、クラスメイトの私よりもこのクラスに味方がたくさんいるのだ。
おかげで、ここ南高に入学してから約三ヶ月。彼女の誘いを断り続けている私は、自分のクラスなのにちょっと肩身が狭い。でも善良なだけの岡本さんは、そういう私の状況なんて想像もしないだろう。
「今日こそ、我が陸上部に入ってもらいたい!」
この三ヶ月で聞き飽きるほど言われたセリフに、私もため息を飲みこむことはやめた。