サヨナラを言う準備は出来ていた。
「何度誘われても、私の答えは変わらないよ」
「そんなのわかんないじゃん? 人間だもん、急に気が変わることもあるって。じゃ、また明日!」
勝手なことを言うと、岡本さんは慌てたように教室を飛び出していった。
さすが陸上部期待の一年生。あっという間だった。
もしかしたら、私が陸上を辞めずに、彼女の隣で走る未来もあったかもしれない。そう考えると、岡本さんへの苛立ちは萎んでいった。
「岡本ちゃんがあれだけお願いしてるんだから、一回くらい行ってあげればいいのにね」
再び窓際から聞こえてきた声に、ぎゅうっと胃が収縮するのを感じる。
「ほんと。岡本ちゃんかわいそ」
「矢部さんて、岡本ちゃんより足速かったらしいよ」
「あー。だから感じ悪いっていうか、上から目線なんだ?」
席を立ち、鞄を肩にかける。
さっさと帰ろう。これ以上雑音を拾いたくない。