サヨナラを言う準備は出来ていた。
「……ご、ごめん。その日は、家にいたい」
「“花火はベランダで結星と見る”って決めてるから?」
驚いて、笹森くんの顔をまじまじと見てしまう。
どうして知っているんだろう。
なんて、そんなの決まってる。結星が話したんだ。
「……そうだよ」
胸元をギュッと握り締める。
シャツの下の硬い感触が、私に力をくれる。存在を知らしめて、叱咤してくれる。
大丈夫だ、踏ん張れ、流されるな。胸元を握りしめながら、私は自分自身に言い聞かせた。
「矢部の気持ちがわからないわけじゃない。でも、そろそろ今を見てもいいんじゃないか?」
「何が言いたいの」
「わかってるだろ。あいつは……結星はもういない」