サヨナラを言う準備は出来ていた。
私は俯き、唇を噛んだ。
聞きたくない。何も聞きたくない。
その話をしたくなくて、されたくなくて、この高校に来た。私と結星のことを知る同級生が、いちばん少ない高校に。
それでも噂は回るもので、他校から情報を仕入れた子たちが、私と結星、時には笹森くんのことも混ぜて面白おかしく話すのだ。
それが嫌で嫌で仕方なくて、私は誰ともまともに会話することができなくなった。
私が孤立したのは、岡本さんのせいだけじゃない。自分で孤立することを選んだようなものだ。
誰からも、結星のことを言われたくない。結星の名前を、口にしてほしくない。
そういう私の気持ちを、笹森くんは理解してくれてると思ってたのに。
「じゃあ、何? 結星のことなんて忘れろって?」
よりにもよって笹森くんが、結星がいないことを私に突きつけてくるなんて。
信じていたのに、と勝手に裏切られた気持ちになって、目の前が赤く暗く染まった。