サヨナラを言う準備は出来ていた。
「この花火を、大切な人と一緒に観るとね、幸せになれるんだよ」
もうすぐお父さんが来るから、一緒に観ようね。
間に合うかな。
抱き上げた結をゆらゆらと揺らしあやしていると、インターホンが鳴った。
「噂をすれば、涼平くんじゃない?」
「だね。涼平~! 早く早く! 花火終わっちゃうよ~!」
私は結を抱いたまま、玄関へと夫を迎えに小走りした。
外からはまだ花火の打ち上がる音が響いていた。
今年の祭りの夜は、もう少し続く。
来年も再来年も、この子が大きくなってもきっと。


