サヨナラを言う準備は出来ていた。
あいつを求め過ぎて幻聴がするようになっちゃったのかも。
私は苦笑いしながら首を振り、部屋に戻った。
リビングのベビーベッドの上で、生まれたばかりの赤ちゃんが泣いていた。
まんまるなお顔を真っ赤にして、小さな手足をバタバタさせて私を呼んでいる。
「はいはい、結。どうしたの?」
「結ちゃん、花火の音にびっくりしたんじゃなあい?」
お母さんが笑って言う。冗談だったのかもしれないけど、それもありえるな、と私は娘を抱き上げた。
柔らかくて温かい、私の新しい宝物。
「大丈夫だよ、結。花火はとっても綺麗なの。ほら、見える? 大きなお花みたいでしょ?」
「まだ見えないでしょ~」
「見えてるよぉ。だってほら、泣き止んだじゃない。おっきく目を開けて見てるもん」
小さなおててが、窓の向こうに伸ばされる。
私はその手に自分の指を握らせながら「いいことを教えてあげる」と語りかけた。