ゆっくり紡ぐ、愛の言葉
愛斗は送迎車に乗り、いつものように利用者さんの家へ向かっていた。
時刻は9時を少し回ったところ。前方の信号が青に変わり、ゆっくりと進み始めたその瞬間、ドンという大きな衝突音が道の先から響いてきた。
見ると、角から出てきた救急車と消防車が、まっすぐに進んできた別の車両と激しくぶつかったのだ。慌てて運転手がブレーキを踏み、車は道の手前で停まる。すぐに消防車の無線からも「現場で事故発生、応援要請」という声が漏れ聞こえてきた。
警察がすぐに規制線を張り、9時10分から全面通行止めになるとアナウンスが入った。この道は住宅地へ続く一本道で、他に抜ける道はない。事務所に連絡しても、他の職員はすでに出払っており、代わりに迎えに行く手立てもない。愛斗たちはただ車内で待つしかなく、そのまま1時間が過ぎていった。
10時を回った頃、ようやく警察車両が数台到着し、現場の整理が始まった。愛斗は退屈しのぎにスマホを取り出すと、辛島美登里から「インスタライブを始めたよ」という通知が届いているのに気づいた。
画面を開くと、そこには美登里の隣に澤田知可子と小林明美が並んで、笑顔で話している姿が映っていた。愛斗は少し照れながら、コメント欄に一言打ち込む。
「美登里が好きだよ」
すぐに美登里がコメントを読み上げ、アカウント名を確認すると、柔らかい笑みを浮かべた。
「このコメント… 愛斗くんね。今日は仕事のはずなのに、ライブを見てくれているの?」
愛斗は続けて状況を説明する。
「いつもこの時間は仕事で動いているんだけど、今日は送迎の途中で救急車と消防車の事故があって、9時10分から通行止めになってるんだ。一本道なので迂回もできないし、他の職員に代わってもらうこともできなくて、今は車の中で待っている状態だよ。だから予定通り動けないし、最初からライブに直接参加することもできなかったんだ。今警察が来たところだから、まだ開通まで時間がかかると思う」
画面の向こうで美登里は少し驚いた表情になり、すぐに心配そうに問いかける。
「そうだったの…! 愛斗くん、怪我はないの? 大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。事故を目撃しただけで、自分たちは巻き込まれてないよ。ただ慌ててカフェオレをこぼしちゃって、少し洋服が汚れちゃったけど。それより、美登里のライブが見られて、なんだか落ち着くよ」
隣にいた明美が不思議そうに尋ねる。
「美登里さん、この愛斗さんという方は、知り合いなんですか?」
美登里ははっきりと、優しく笑顔で答えた。
「ええ、紹介します。私の彼氏です。末山愛斗くんといって、とても誠実で大切な人なんです」
ライブのコメント欄には「おめでとう」「素敵なカップル」といった言葉が次々と流れ、愛斗は画面を見ながら胸の奥が温かくなるのを感じていた。
その後も通行止めは続き、愛斗たちが現場を抜けられたのは12時を過ぎた頃だった。やっとの思いで事業所に戻り、3時半まで残りの仕事を片付けてから、ようやく一日の業務が終了した。
帰宅途中にミニストップに立ち寄り、飲み物と簡単な食べ物を買って自宅へ向かう。鍵を開けて部屋に入ると、美登里はまだ仕事のため留守だった。愛斗は着替えを済ませ、汚れた服を洗濯機に入れ、散らかった荷物を整理し、ゆっくりと一日の疲れを癒しながら、今日の出来事を静かに振り返っていた。
時刻は9時を少し回ったところ。前方の信号が青に変わり、ゆっくりと進み始めたその瞬間、ドンという大きな衝突音が道の先から響いてきた。
見ると、角から出てきた救急車と消防車が、まっすぐに進んできた別の車両と激しくぶつかったのだ。慌てて運転手がブレーキを踏み、車は道の手前で停まる。すぐに消防車の無線からも「現場で事故発生、応援要請」という声が漏れ聞こえてきた。
警察がすぐに規制線を張り、9時10分から全面通行止めになるとアナウンスが入った。この道は住宅地へ続く一本道で、他に抜ける道はない。事務所に連絡しても、他の職員はすでに出払っており、代わりに迎えに行く手立てもない。愛斗たちはただ車内で待つしかなく、そのまま1時間が過ぎていった。
10時を回った頃、ようやく警察車両が数台到着し、現場の整理が始まった。愛斗は退屈しのぎにスマホを取り出すと、辛島美登里から「インスタライブを始めたよ」という通知が届いているのに気づいた。
画面を開くと、そこには美登里の隣に澤田知可子と小林明美が並んで、笑顔で話している姿が映っていた。愛斗は少し照れながら、コメント欄に一言打ち込む。
「美登里が好きだよ」
すぐに美登里がコメントを読み上げ、アカウント名を確認すると、柔らかい笑みを浮かべた。
「このコメント… 愛斗くんね。今日は仕事のはずなのに、ライブを見てくれているの?」
愛斗は続けて状況を説明する。
「いつもこの時間は仕事で動いているんだけど、今日は送迎の途中で救急車と消防車の事故があって、9時10分から通行止めになってるんだ。一本道なので迂回もできないし、他の職員に代わってもらうこともできなくて、今は車の中で待っている状態だよ。だから予定通り動けないし、最初からライブに直接参加することもできなかったんだ。今警察が来たところだから、まだ開通まで時間がかかると思う」
画面の向こうで美登里は少し驚いた表情になり、すぐに心配そうに問いかける。
「そうだったの…! 愛斗くん、怪我はないの? 大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。事故を目撃しただけで、自分たちは巻き込まれてないよ。ただ慌ててカフェオレをこぼしちゃって、少し洋服が汚れちゃったけど。それより、美登里のライブが見られて、なんだか落ち着くよ」
隣にいた明美が不思議そうに尋ねる。
「美登里さん、この愛斗さんという方は、知り合いなんですか?」
美登里ははっきりと、優しく笑顔で答えた。
「ええ、紹介します。私の彼氏です。末山愛斗くんといって、とても誠実で大切な人なんです」
ライブのコメント欄には「おめでとう」「素敵なカップル」といった言葉が次々と流れ、愛斗は画面を見ながら胸の奥が温かくなるのを感じていた。
その後も通行止めは続き、愛斗たちが現場を抜けられたのは12時を過ぎた頃だった。やっとの思いで事業所に戻り、3時半まで残りの仕事を片付けてから、ようやく一日の業務が終了した。
帰宅途中にミニストップに立ち寄り、飲み物と簡単な食べ物を買って自宅へ向かう。鍵を開けて部屋に入ると、美登里はまだ仕事のため留守だった。愛斗は着替えを済ませ、汚れた服を洗濯機に入れ、散らかった荷物を整理し、ゆっくりと一日の疲れを癒しながら、今日の出来事を静かに振り返っていた。