自惚れ、アディクト
「美園結莉と申します。よろしくお願いします」

お辞儀をする彼女に先輩たちがつられて立ち上がり、各々が自己紹介と名刺交換をする。
貰った名刺を机に置いた後輩は、美園さんに見惚れて「かわいい…」と、心の声がダダ漏れだ。

仕事中だぞ。合コンじゃねぇっての。


「(こいつ…。次から連れて行くのやめるか)」

呆れて眉根を顰める俺に、ハンサムくんが言った。

「美園、こちらが神崎さん」

無垢な双眸が上目遣いに凝視する。

「…………(やっぱり…このひとが神崎さん…。髪、長いんだなぁ)」
「…………」

ん?と、小首を傾げた。
綺麗にカールされた睫毛が、照明の光を集めてはためく。

「いつもお世話になります。よろしくお願いします」

「お世話になります。神崎です、よろしくお願いします」


⸝⸝꙳

美園さんが用意した資料は、要点がわかりやすくまとめられており、伝えたいことも簡潔で順調に進む。

デザインの仕様とイメージ、おおまかなスケジュールが決まった。先輩は一安心したのか、話してる最中、口角がゆるゆるだ。
俺は横目に「だから、仕事中」と。愚痴っぽく胸中で零す。

どこか浮き足立っている二人とは対照に、美園さんは俺の案に耳を傾けて頷いたり、ハンサムくんに意見を聞いたり、メモを取ったりと…真剣な眼差しで見てくるものだから、面食らってしまった。


「初稿が出来上がったら、改めて連絡します」

一時間に及ぶ打ち合わせが終わった。

薄型のノートパソコンを片付けているところ、美園さんと花菱の会話が耳に入る。

「先生にスケジュール伝えておいて。それから、帯のチェックも…」

花菱から指示を受けているようで、厚みのある手帳に走り書きをする指先が留まった。

そして、この場に似つかない甘い声が舞う。


「なんとか間に合いそうで良かったです」

「美園が余裕持って準備を進めていたからだよ。上手く出来てる。やるじゃん」

ハンサムくんは褒めるのも上手い。

「ありがとうございます。ほんまに、先輩がおってくれて助かりました。心強かったです」


“ほんまに、先輩がおってくれて”

柔らかな方言につられて視線を持ち上げる。

緊張が解けたのか、目の前の彼女がふにゃりと笑った。
< 24 / 24 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

甘々とロマンス中毒
果乃子/著

総文字数/127,144

恋愛(純愛)205ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「年の差なんてケセラセラ」 恋心に臆病になったとき、 いつも、私を掬ってくれる魔法の言葉 𓈊ˊ˗ 望月一咲が高校に入学した春。 幼なじみの雪村あやみは、 学業に専念するため芸能界を引退した。 3ヶ月が経ったある日…一咲は意を決して、 あやみの自宅訪問を解禁する———… ♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡ 好きな人に追いつきたい子 一咲(16) -Isaku- × 遊びの恋しか知らない元芸能人 あやみ(20) -Ayami- ♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡ 「あやちゃんに追いつくようにいっぱい走るね」 「焦らないで、一咲のペースで走ればいいよ。 俺も自分のペースで走っていくから。でも…」 ———寄り道しないで、俺のとこにおいで 一途な女の子が、大好きな幼なじみの恋人になって 溺愛されるお話°ʚ🎀ɞ°. start▶︎2025.11.24
さよならの前に抱きしめて
果乃子/著

総文字数/28,719

恋愛(純愛)69ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
都倉 千夏、17歳。 最近気になるのは隣の席の小鳥遊くん。 小鳥遊くんと目がぶつかるたび、 心が揺れるのはなんでだろう。 私はまだ、 この気持ちの名前を知らない。
きみは永遠の小悪魔【完】
果乃子/著

総文字数/55,494

恋愛(純愛)98ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「恋愛初心者なので、大事にしてくださいね」 「どこまで煽ったら気が済みます?」 恋に夢みるお嬢様 久世 ふみ(20) × 無愛想なボディガード 水無瀬 彗(23) ♡私の好きな人を紹介します 無愛想 意地悪 自信過剰 ♡毒があって態度も悪い 「アルコール3%で酔ってるんですか」 「さすが、お子様ですね」 ♡だけど、たまに優しい 「俺が可愛いって言ってるから、可愛いです」 私はいつもあなたに夢中︎︎𓂃⟡.· start▷2024.10.23 End ▶︎2024.11.24

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop