自惚れ、アディクト

宵の月

俺の華やかな高校生活は、順風満帆そのものだ。
少なくとも“恋愛以外”は。


「じゃ〜〜ん、手作りだよ」

「は……なにこれ」

差し出されたそれを目の前に瞬きをした。カリンが大袈裟に頬を膨らませる。重ねて俺は「はあ?」と、小首を傾げた。

「バレンタインのチョコに決まってんじゃん!」

「あ゛〜〜…ソダネ」

「なにその返事」

俺、イベント(特にバレンタイン)は、しない派だから「いらない」って言ったはずだけど。

「愛央、甘いの苦手なんだよね?」

苦手なのはバレンタインなんだが。

「ビターチョコでブラウニー作ってみたの。どーぞ。いっぱい愛情込めてるからね」

「アリガトー」


つうか、俺の話聞いてなかったんだ?

押し付けられるまま、ワインレッドのチェック柄で包装された箱を手にした。

「こんなことしたの愛央が初めなんだよ」嬉々として話すカリンに「すげぇ、うれしい。後で食うわ」と、平坦な口調で返す。

中身は見ずとも外側から致死量の甘さを感じる。ずっしりと重たく、口にする以前に胸焼けがした。


「あ〜〜お…くんっ。す〜〜き」
「ハイハイ」


カリンが腰に抱きついて、二人してベッドに傾れ込んだ。ふふん、と声を弾ませるカリンからミモザの香りが鼻をついた。それを、バレないよう手で払う。

密着した素肌。暖房が効いてる部屋にいるのに、汗をかいたせいかひんやり冷たい。枕の脇に投げ捨てた派手な箱を横目に「チョコひとつに喜ぶやつらが理解できねぇ」と、気持ちが引いていく。
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