「譲れない、彼女。」

第4話 「初めてのキス」

卒業式の前日。

沙和と、
いつもの帰り道を歩く。

もう、
今日しかない。

そう決めて、
俺は立ち止まった。

「沙和」

呼び止めると、
沙和が振り返る。

「俺……沙和とキスしたい」

すると沙和は、
少し笑って言った。

「やっと言った」

「えっ?なんだよ、それ」

「だって、
倫也、なかなかしてくれないんだもん」

「してよかったの?」

「だって、彼女だし。
私だって、好きって言ったじゃん」

「そうだけど……急ぎすぎるのも
よくないかなって」

沙和は、クスッと笑う。

「倫也らしい」

俺は少し照れながら言った。

「俺さ……初めてなんだ」

「えっ?」

「女の子とキスするの」

沙和は、
少し驚いた顔をして、

すぐに優しく笑った。

「私も。初めて」

「それなら……俺も嬉しい」

そう言うと、

沙和が
ゆっくり俺に近づいてきた。

俺も、
一歩近づく。

「沙和。
目、閉じてくれない?」

「えっ?なんで?」

「なんでって……そういうものでしょ」

沙和は、
照れくさそうに笑う。

「倫也の顔、見てたい」

「俺は恥ずかしいよ」

「もう」

少しだけ頬を膨らませる沙和。

「じゃあ、手で隠して」

「それじゃ、見えないけど」

「少しだけ」

「……分かった」

俺は、
そっと沙和の目元に手を添えた。

そして、

沙和の唇に、
そっとキスをした。

ほんの一瞬だった。

でも、

俺には、
すごく長く感じた。

ヤバい。

唇って、

こんなにも
柔らかいんだ。

唇を離すと、

俺は思わず笑ってしまった。

「もう一回……いい?」

沙和は、
少し照れながら笑う。

「……いいよ」



ベッドに横になり、

そっと、

自分の唇に触れた。

沙和の唇の感触が、

まだ残っている気がした。

忘れられない。

「沙和……」

思わず、名前をつぶやく。

明日は、卒業式。

俺の彼女になった
沙和の姿を、

しっかり
見届けたい。

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