思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
1・初対面の狂犬が私の夫になるなんて聞いてない
闘技大会の決勝戦、真っ只中。
スタジアムの中央で剣同士を何度もぶつけ合い、戦う2人の男たちがいた。
「やっちまえ!」
「いいぞ! その調子だ!」
「さっさと負けろ!」
スタンド席は、満員御礼。
彼らの戦いを見守る老若男女が、優勝候補に声援を送る中――くすんだ金色の髪を揺らす男性の指先から、勢いよく剣が飛んでいく。
「く……っ!」
彼は再び武器を手にする気力すらもないほど、疲弊しているようだ。
呻き声を漏らした直後、その場で腰を折って膝をついてしまった。
その姿を目にしたベゼルノーチェ王国の女王であるリベルラは、信じられない気持ちでいっぱいになった。
(ありえない……!)
額から大粒の涙を流し、荒い息を吐き出して戦う気力を失った男――幼馴染のリガルド・モルデントが、参加者の追随を許さぬ圧倒的な勝利を収める。
そして女王である自分と結婚し、子宝に恵まれ幸せに暮らす。
そう、信じて疑っていなかったからだ。
(どうして、こんなことに……)
リベルラはここに至るまでの経緯を、脳裏に思い描く。