思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
「だ、大丈夫ですか!?」

 だが、いつまで経っても己の身体にダメージがやってくる気配はない。
 聞き覚えのない男性から声をかけられた女王は、恐る恐る瞳を見開く。
 その後きょろきょろと辺りを見渡し、馬車が己を轢き殺す前に、急停車する姿を確認した。

(どうにか、危機は脱したみたいね……)

 リベルラは己の胸元にしっかりと抱きかかえられた子どもに傷1つないことを確認したあと、ヴァドリックへ視線を移す。

「へ……っ!」

 護衛騎士がこちらを心配そうに呼ぶ声は、最後まで言葉にならなかった。
 後方から、何者かの襲撃を受けたからだ。

「何者だ!?」

 ヴァドリックはすぐさま腰元の剣を引き抜き、戦闘態勢に入る。
 そうして襲撃者に問いかけたが、黒いローブに覆い隠された人物が即座に目的を明かすわけがない。

(彼は手練れの、元騎士団長よ。遅れを取るとは、到底思えないけれど……)

 リベルラは彼に守ってもらわないと、己の身すらも守れぬか弱き存在だ。
 襲撃者が自分を狙っているのならば、早急にこの場から離脱する必要があった。
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