思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
 だが――。
 この武器を使って抵抗を試みた場合、贈答品を買い直さなくてはならないだろう。
 血濡れの物をプレゼントされて喜ぶ人間など、いるわけがないのだから。

 リベルラはちらりと、ヴァドリックのほうへ視線を移す。
 彼は未だに迫りくる敵と交戦中で、とてもじゃないが頼れそうにはなかった。

「さぁ、行こうか」
「い、やよ……っ! 離しなさい!」

 リベルラは手足をバタバタと動かして抵抗を試みるが、相手は護衛騎士として活動していた男だ。
 強い力で抱き上げられてしまえば、どうしようもない。

「なんだ?」
「あれって、モルデント伯爵令息じゃないか……?」

 尋常ではない女性の叫び声を聞き、通行人たちから訝しげな視線を向けられる。
 リベルラは慌てて王家に伝わる紫色の瞳をアピールしようと試みたが、幼馴染の大きな手が唇を塞いでしまい、それは叶わなかった。

「ふぐぐ……!」
「誰にも、邪魔されないところへ……」

 こうして正体を隠した女王は、幼馴染の卑劣な作戦にまんまと絡め取られ、白昼堂々誘拐されてしまった。
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