思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
「ガルド……っ!」

 だが――。
 耳元で感極まった言葉を発したのは、狂犬ではなかった。

「ああ。やっと、巡り会えた……っ!」

 まさか縁を切ったはずのリガルドが会いに来るなど、思いもしない。

(なんで、ここにいるの……?)

 リベルラはすっかりと女王として立ち振る舞うのを忘れ、戦慄した。

「ご苦労さま」
「うん! ありがとう! 貴族の優しいお兄ちゃん!」

 彼は己の腕の中でおとなしく抱きかかえられていた少女に、金貨がパンパンに詰まった小さな麻袋を投げ渡す。
 それを大切そうに抱きしめた幼子は、するりと腕の中から抜け出し、ぴょんっと地面へ飛び出す。
 その後、元気いっぱいな様子でスラム街の方向へ走り去ってしまった。

(私と話をするためだけに、子どもを買収したの……!?)

 リベルラの知っている幼馴染は卑怯な手段を嫌う、清廉潔白な護衛騎士だった。
 まさか、彼にこのような本性が隠されているなど、想像もしていない。
 かつてリガルドに絶対的な信頼を寄せていた自分が、馬鹿のように思えてならなかった。

(私だって、抵抗する力がないわけではないわ)

 今日はタイミングよく、手元にはガルドラに贈る予定の短剣がある。
 これを開封してリガルドの腕へ勢いよく突き刺せば、幼馴染と距離を取ることくらいはできるだろう。
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