思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
「移動している間に俺の手をすり抜けていかれちゃ、困るからな?」
「う……っ。そ、それは……!」

 こちらがはっきりと否定の言葉を口にできずに面食らっている間、夫は寝台へストンと腰を下ろした。
 そのまま己のドレスを脱がす手つきは、随分と手慣れている。

「ちょっと、待ってよ……! 使用人の手を借りないと、脱着できないのよ……!?」
「貴族や王族なら、無理もねぇだろ」
「平民の殿方は全員、こうした技術を学ぶの?」
「人によるとしか、言えねぇな……」

 気まずそうに視線を逸らす彼の姿を前にして、胸がチクンと痛む。
 それは恐らく、ガルドラの後ろに女の影が見え隠れし始めたからなのだろう。

(報告書に浮ついた話は、何1つ書かれていなかったけれど……)

 治安がいいとは言えぬスラム街で長年生き残り続けるには、腕っぷしの強さだけでは限界がある。
 時にはそうしたいかがわしい行為を率先して行い、年上の女性に取り入り、金銭を得てきたのかもしれない。
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