思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
「クロドノルン公爵家の血を引く、落とし胤の君にならば……。安心して、リベルラを任せられる……」

 陛下は自分の出自だけではなく、“一匹狼の名無し”と呼ばれていた少年が現在、モルデント伯爵家の息子として生きていることも、すべてを把握した上で、ガルドラに愛娘を託そうとしてくれている。

(スラム街へほっぽり出された時は、どうしようかと思ったが……。こんな未来も、悪くはねぇか……)

 ガルドラはこちらをじっと見つめる国王と視線を交わらせ、しっかりと頷いた。

「娘を、頼む……」
「お任せください。俺が必ず、殿下を幸せにします」

 人には誰しも、他者には言えない秘密を抱えて過ごしている。
 ガルドラは、自分からクロドノルン公爵家の血を引く高貴なる身分であったことを、ひけらかすつもりはない。
 正妻の策略に嵌まり、家名を捨てさせられた己には、その名を名乗る資格がないと思っていたからだ。

 しかし――。
 ここで王命に逆らった結果、太陽のように光り輝く神々しき少女の笑顔が、曇るのなら――。

(どんな苦痛も罵倒も受け入れ、彼女の伴侶に相応しき男になってやるよ……!)

 こうしてガルドラは、彼女の知らぬところで秘密裏に国王と密約を交わしたのだった。
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