思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
 自分の母親のせいでガルドラがスラム街で暮らす羽目になったことに、負い目を感じているのだろう。
 こうして弟に意味ありげな視線を送る辺り、兄としては弟を大切に思ってはいそうで何よりだ。

「夫を、心配してくれるのね」
「兄貴は昔から、ずっとこうなんだよ。俺のことなんざ気にせず、貴族として生きてけばいいのによぉ……」
「不義の子であろうが、半分しか血が繋がっていなかろうが、ガルドラは弟だ。見捨てるなんて、できない」
「ほらな。こうやって変に入れ込むから、面倒なことになるんだろ」

 素直に感謝を伝えればいいのに、ガルドラは呆れたように肩を竦め、「ありがた迷惑だ」とでも言わんばかりに眉を顰める。
 そんな異母弟の姿を目にした兄は、不機嫌そうな声音で言い放つ。

「私がお前を気にして、何が悪い」
「婚約者を蔑ろにしたせいで、色々大変だって聞いたぜ?」
「あれは……」

 ヴァドリックはバツが悪そうに、口ごもる。
 藍色の瞳に後悔のような感情を滲ませる姿は、無口で表情をほとんど変化させない普段の護衛騎士らしくなかった。
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