思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
(同族には、いい牽制になるかもしれないけれど……)

 この国の最高権力者であるはずの自分が、格下の相手に捕食されかける。
 夫と会話をするたびにそんな嫌な記憶を思い出すなど、冗談ではない。
 リベルラは渋々、先程の発言を撤回した。

「そのままで、いいわ……」
「懸命な判断だな」

 先ほどまでの、恐ろしいとさえ感じる表情はどこへやら。
 肩を竦めて普段と変わらぬ態度に戻った彼の姿を目にして、すぐに狂犬の意図を悟る。

 彼も丁寧な口調でこちらに接するの嫌だから、わざと「気味が悪い」と感じさせるような言い方をしたのだろう。

(本当に、悪知恵が働くというか、なんというか……)

 ガルドラは、油断ならぬ男だ。
 たった数回言葉を発しただけでも痛いほどに実感するのだから、この先が思いやられる。
 ――心の底から信頼を寄せるまでは、まだまだ長い時間がかかりそうだった。

「俺に対する疑いは晴れたなら、婚儀の日は近いかもな?」
「準備が終わり次第、執り行う予定よ」
「早く、陛下の夫になりてぇのに……」

 彼は夫婦になる日が待ち遠しくて堪らないと言わんばかりに、熱を帯びた瞳で告げる。
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