思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
 バツやら丸やらをつけている辺り、助成金を手にした伯爵がどこまでスラム街の維持管理にかかわっているのかまでも、しっかりと把握済みのようだ。

(持つべきものは、頼りになる狂犬かもしれないわね……)

 リベルラは感心した様子で、壁際に佇む使用たちに声をかけた。

「アツパイダ伯爵を、呼びなさい」
「かしこまりました」

 その後目当ての人物が姿を見せるまで、書類の整理を再開した。

 この間、護衛騎士との会話は一切ない。
 しかし――。

 意図的か、無意識か。
 どちらでもよいと思っている線もあるが――リガルドはついに、ガルドラへの憎悪を隠さなくなった。

(視線が痛いわ……)

 それが自分ではなく、後方にいる夫へ向けられているとしても、いい気分はしなかった。
 かつて好きだった人から憎しみの籠もった視線を向けられるのは、つらい。
 リベルラは封蝋を持つ手に力を込め、今にも泣き出してしまいたい気持ちをぐっと堪える。
 そして女王の仮面を被り直し、気丈に振る舞い続けた。
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