お見合いの失敗理由は妹が美し過ぎたせい。

10.ユリア皇后side

 どうして……。
 どうしてこうなったの……?

 四番目の子を腕に抱いて列車に乗ったのに、いつの間にか城に連れ戻されていたわ。
 お義母様はものすごく怒っているの。
 私を見た瞬間にすごい勢いで近づいてきて、私の頬を叩いたわ。

「何を考えているの! 勝手に城から出るだなんて! 護衛をつけるでもなく、侍女を伴うでもなく! そのせいで、この子は死んだのよ!?」

 赤ちゃん。
 私の赤ちゃんは、いつの間にか冷たくなっていたわ。
 なんで……?

「赤ん坊を……それも生後、数週間の赤ん坊を、この寒い中を薄着で連れ出すなんて!」

 薄着?
 違うわ。
 ()()ちゃんと()()()()()()()()()()わ。
 コートの下だって、そう。
 ()()ちゃんと()()()()()()もの。
 お義母様は、本当におかしなことをおっしゃるわ。

「なにを呆けているの! 自分が何をやったのか理解していないの!?」
「……」
「城を抜け出したことといい、一体何が不満だと言うの! 貴女の嫌いな勉強はストップしてあげているでしょう!?」
「……」
「貴女……まさか、この子に何か恨みでもあるの!?」
「……」
「そうなのね! あの子が私に似ていたから? だから気に入らなかったの? だから死ぬような行動を起こしたの!?」
「……そんな……」

 ひどい。
 言いがかりだわ。
 たしかに、あの子は私に似ていない。
 他の子供たちは、私やフランツに似ているのに。
 あの子だけは、何故かお義母様に似てしまった。
 だけど、それだけで嫌うなんてありえないわ!

「じゃあ、なんなの! 何故、あの子を連れて出て行こうとしたの! 列車に乗ってどこに行こうとしていたの!」
「……わ、わたしは……お、おねえさまに……会いに……」
「お姉様? カロリーネのこと?」
「……は、はい……」
「カロリーネはソル王国に嫁いだのは知っているわよね」
「……はい」
「ソル王国に行こうとしていた、ということかしら?」
「……はい」
「貴女、ここからソル王国がどれだけ離れているのか理解しているのかしら?」
「……え?」
「その様子では理解していないようね。……はぁ~~っ」
 
 お義母様は、帝国からソル王国は、途方もなく遠いことを教えてくれた。
 どれだけ遠いのかは行ったことがないから、よく分からなかったけれど……。ただ、数日で行ける場所ではないことだけは分かったわ。

「貴女がカロリーネに会いにソル王国に行こうとしていたのは分かったわ。でも何故? どうして、あの子を連れて行こうとしたの? その理由を教えてちょうだい」

 え?
 理由?
 それは……。

「お、おねえさま……に、……赤ちゃんを見せたくて……」

 そうだわ。
 おねえさま……、カロリーネお姉様に、赤ちゃんを見せてあげたくて……。だって……だって、お姉様には、赤ちゃんが出来ないでいるんですもの。かわいそうなお姉様のために、私は我が子を見せようと……。

「カロリーネに赤ちゃんを見せてどうしようというの?」
「……そ、それは……。お姉様が、よ、喜ぶと……」
「カロリーネが喜ぶですって!? 赤ちゃんを見て?」
「は、はい……」
「……貴女が何故、そんなことを考えたのかは理解不能だけれど、カロリーネも出産したばかりなのよ。いきなり尋ねるなんて非常識なことは止めなさい!」
「……え……?」

 お姉様が出産?
 出産した……?
 赤ちゃんを出産……?
 え……? どうして? だってお姉様は、子供が出来ない体のはずでしょう? 結婚して五年経っても子供が出来ないって聞いたわ。
 なのに……。なんで……?
 分からない。
 お義母様の言っていることが理解できない。
 だって、お姉様は自分の赤ちゃんを産めない可哀想な人だもの。
 私と同じ。ううん、わたしよりかわいそう。だって赤ちゃんを抱けない、かわいそうな……ひと……だもの……。
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