お見合いの失敗理由は妹が美し過ぎたせい。
11.妹の未来1
「カロリーネ、君の妹君がついにやらかしてしまったよ」
「まぁ」
「それも取り返しのつかないやらかしだ」
「あら」
いつか何かをやらかしてしまう、とは思っていましたけれど。随分、遅かったようですわ。私としてはもっと早い段階の〝やらかし〟を想定していましたのに。いいえ、遅かったからこそ「取り返しのつかない」事態に発展してしまったのでしょう。
「それで、妹は何をしたのでしょうか?」
「ああ、それは——」
夫から事情を聞き、もう呆れるしかありませんでした。
産まれたばかりの赤子を連れて城を無断で外出……夫が言うには家出だそうですが。
しかも、赤子は薄着のまま外に連れ出したらしく、そのせいで赤子は亡くなってしまったそうです。妹は「私に産まれた子供を見せたかっただけ」と、言っているようですが……。何故、私に見せる必要があるのでしょうか?
誕生祝いなら贈ったはずです。
今、私はソル王国の王妃。
夫の国王と連名だったので気づかなかったのでしょうか?
いえ、問題はそこではありませんわね。
「何故、ユリアは我が子の防寒をしなかったのかしら?」
そうすれば、赤子は死ぬことはなかったでしょうに。
「それなんだが、本人は防寒をしていると言っているんだ」
「……赤子は薄着ですのに?」
意味が分かりません。
薄着なのに防寒をしている、とは?
「う~~ん、妹君は、自分はしっかりと防寒対策をしているから大丈夫、とのことだ」
「ますます意味が分かりません」
「防寒している自分が腕に抱いているから大丈夫と思った、ということらしい」
「……理解に苦しみます」
「普通は、そうだ。理解する必要はないよ」
やや呆れ気味な夫に、私は苦笑で返すしかありませんでした。
実の妹とはいえ、本当に理解に苦しみます。
はぁ~~……。
ただ、それでも妹です。
可愛い妹ですもの。
何を考え、何を思っているのか。理解したいと思ってもいるのです。たとえそれが、常人には中々難しいことだったとしても……です。
一ヶ月後、妹は療養に入ったと帝国の伯母様から手紙が届きました。
帝国での慣れない生活、度重なる出産——色々と重なりノイローゼ気味になっていたと。
確かに、おかしな行動が多い妹です。「ノイローゼだから」と、言われれば納得する者は数多くいるでしょう。
ですが、私は、あの子の姉です。
妹の奇異な行動の数々は「ノイローゼだから」ではありません。全て「正常な精神状態での行動」だと断言できます。
ただ、家族以外の人からは理解されないだけで……。
帝国の第二皇女の死は、悲劇として語られるようになるのに時間はかかりませんでした。
生まれて間もない子が亡くなったのですから当然でしょう。
その発端となったのは、皇后の行動なのです。
本来なら厳しい目で見られ、非難の的になるはずの皇后は「ノイローゼ」という盾によってそれを躱していました。
「懐妊が早すぎたのですわ」
「ええ、ご結婚も早かったですものね。もう少し待ったほうが宜しかったのだわ」
「王女とはいえ、いきなり帝国の皇后陛下ですものね」
「中々、厳しいものがありますわ」
ソル王国の社交界では、妹の話で持ち切りです。
大国の皇后のご乱心ですからね。嫌でも噂になります。
「療養されると聞きましたわ」
「ええ、早く良くなるといいですわね」
「全快の見込みはないとのお話ですわよ」
「まぁ、お気の毒に……」
「空気のいい場所での生活なら、少しは良くなるのではないかしら?」
「医師や看護師も常時いらっしゃるとか」
「なら、まだ快復されるのではないかしら?」
「どうでしょうね。マシにはなるかもしれませんけど……」
「難しい問題ですわね」
いつの間にか妹は田舎に療養する話になっていますわ。
そのような話は帝国から聞いていませんが……?
伯母様からの手紙には「自室でふさぎ込んでいる」としか書かれていませんでした。
社交の場では様々な情報が飛び交うのは自然なことです。その中で、噂話が肥大化した、というのもよくある話。少なくとも女性たちは妹を「子供を亡くした気の毒な皇后陛下」と同情的ではありますが、事実を知っている方々は、噂話に加わることなく、別の話題を話されていました。
「まぁ」
「それも取り返しのつかないやらかしだ」
「あら」
いつか何かをやらかしてしまう、とは思っていましたけれど。随分、遅かったようですわ。私としてはもっと早い段階の〝やらかし〟を想定していましたのに。いいえ、遅かったからこそ「取り返しのつかない」事態に発展してしまったのでしょう。
「それで、妹は何をしたのでしょうか?」
「ああ、それは——」
夫から事情を聞き、もう呆れるしかありませんでした。
産まれたばかりの赤子を連れて城を無断で外出……夫が言うには家出だそうですが。
しかも、赤子は薄着のまま外に連れ出したらしく、そのせいで赤子は亡くなってしまったそうです。妹は「私に産まれた子供を見せたかっただけ」と、言っているようですが……。何故、私に見せる必要があるのでしょうか?
誕生祝いなら贈ったはずです。
今、私はソル王国の王妃。
夫の国王と連名だったので気づかなかったのでしょうか?
いえ、問題はそこではありませんわね。
「何故、ユリアは我が子の防寒をしなかったのかしら?」
そうすれば、赤子は死ぬことはなかったでしょうに。
「それなんだが、本人は防寒をしていると言っているんだ」
「……赤子は薄着ですのに?」
意味が分かりません。
薄着なのに防寒をしている、とは?
「う~~ん、妹君は、自分はしっかりと防寒対策をしているから大丈夫、とのことだ」
「ますます意味が分かりません」
「防寒している自分が腕に抱いているから大丈夫と思った、ということらしい」
「……理解に苦しみます」
「普通は、そうだ。理解する必要はないよ」
やや呆れ気味な夫に、私は苦笑で返すしかありませんでした。
実の妹とはいえ、本当に理解に苦しみます。
はぁ~~……。
ただ、それでも妹です。
可愛い妹ですもの。
何を考え、何を思っているのか。理解したいと思ってもいるのです。たとえそれが、常人には中々難しいことだったとしても……です。
一ヶ月後、妹は療養に入ったと帝国の伯母様から手紙が届きました。
帝国での慣れない生活、度重なる出産——色々と重なりノイローゼ気味になっていたと。
確かに、おかしな行動が多い妹です。「ノイローゼだから」と、言われれば納得する者は数多くいるでしょう。
ですが、私は、あの子の姉です。
妹の奇異な行動の数々は「ノイローゼだから」ではありません。全て「正常な精神状態での行動」だと断言できます。
ただ、家族以外の人からは理解されないだけで……。
帝国の第二皇女の死は、悲劇として語られるようになるのに時間はかかりませんでした。
生まれて間もない子が亡くなったのですから当然でしょう。
その発端となったのは、皇后の行動なのです。
本来なら厳しい目で見られ、非難の的になるはずの皇后は「ノイローゼ」という盾によってそれを躱していました。
「懐妊が早すぎたのですわ」
「ええ、ご結婚も早かったですものね。もう少し待ったほうが宜しかったのだわ」
「王女とはいえ、いきなり帝国の皇后陛下ですものね」
「中々、厳しいものがありますわ」
ソル王国の社交界では、妹の話で持ち切りです。
大国の皇后のご乱心ですからね。嫌でも噂になります。
「療養されると聞きましたわ」
「ええ、早く良くなるといいですわね」
「全快の見込みはないとのお話ですわよ」
「まぁ、お気の毒に……」
「空気のいい場所での生活なら、少しは良くなるのではないかしら?」
「医師や看護師も常時いらっしゃるとか」
「なら、まだ快復されるのではないかしら?」
「どうでしょうね。マシにはなるかもしれませんけど……」
「難しい問題ですわね」
いつの間にか妹は田舎に療養する話になっていますわ。
そのような話は帝国から聞いていませんが……?
伯母様からの手紙には「自室でふさぎ込んでいる」としか書かれていませんでした。
社交の場では様々な情報が飛び交うのは自然なことです。その中で、噂話が肥大化した、というのもよくある話。少なくとも女性たちは妹を「子供を亡くした気の毒な皇后陛下」と同情的ではありますが、事実を知っている方々は、噂話に加わることなく、別の話題を話されていました。