花囲い
第3話 水没
私は自分の名前があまり好きではない。
『沙羅』というその響きは珍しいわけではないけれど、ありふれているわけでもなく。教室で名前を呼ばれれば、振り向くのは私だけ。
だから、井𡈽くんがその名前を呼ぶたびに、逃げ場がないような気持ちになる。
「おはよう、沙羅さん」
昇降口で靴を履き替えていると、当たり前のように声をかけられた。
「おはよ」
最初は気のせいだと思っていた。クラスのみんながいる前では「佐藤さん」と呼ぶのに。
二人きりになると必ず「沙羅さん」になる。
私は一度も「名前で呼んでいい」と言った覚えはないが、注意するほどのことでもないと思って、そのままにしていた。
それがいけなかったのかもしれない。
『沙羅』というその響きは珍しいわけではないけれど、ありふれているわけでもなく。教室で名前を呼ばれれば、振り向くのは私だけ。
だから、井𡈽くんがその名前を呼ぶたびに、逃げ場がないような気持ちになる。
「おはよう、沙羅さん」
昇降口で靴を履き替えていると、当たり前のように声をかけられた。
「おはよ」
最初は気のせいだと思っていた。クラスのみんながいる前では「佐藤さん」と呼ぶのに。
二人きりになると必ず「沙羅さん」になる。
私は一度も「名前で呼んでいい」と言った覚えはないが、注意するほどのことでもないと思って、そのままにしていた。
それがいけなかったのかもしれない。